講義内容詳細:法学入門

戻る
年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 法学入門
英文科目名/Course Title (English) Introduction to Law
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 細川 良
英文氏名/Instructor (English) HOSOKAWA Ryo

講義概要/Course description
 法学部に入学した皆さんは、これから4年間かけて「法学」を学ぶこととなります(ヒューマンライツ学科(以下、HR学科)に入学した皆さんは、「法学」に加えて、ヒューマンライツに関係する社会科学の諸領域もあわせて学ぶぶことになります)。そして、本講義「法学入門」は、これから皆さんが法学部で4年間を過ごすうえでの必要な準備をすることを目的とする科目です。すなわち、「「法」とは何か」ということについて多面的に考察をすることを通じて、今後皆さんが受講する講義で展開される法学の学習に必要な法的な知識、および法的思考を身につけてもらうことを目的としています。
達成目標/Course objectives
本講義の目的は、大きく分けて以下の2つとなります。
 第一に、皆さんが、これから4年間、法学部の学生として様々な領域で法学の学習を進めていくにあたり、最低限必要となる基本的な知識を身につけてもらうことです。具体的には、①基本的な法律用語の定義等、②法制度の枠組み(法律の構造)の捉え方、③条文や判例、通達などの位置づけ、④学習の方法(資料収集や法律文章の書き方)などを解説し、皆さんに理解してもらいたいと思います。
 第二に、皆さんが法学を学ぶにあたって必要となる、「法学的な思考方法」を習得することです。法学は、社会における様々な現象や、皆さんの日常生活の周囲にも幅広く関係しています。皆さんのなかには、高校時代に「政治・経済」や「現代社会」といった科目で、法学に関連する一定の知識を習得している人もいるでしょう。また、法学に関連するニュースなどに触れて、それなりの知識を持っていると考えている人もいるでしょう。しかし、「法学を学ぶ」ということは、単にこうした法に関連する「知識を身につける」ことだけではありません。むしろ、法に関連する様々な事象について、(法的な知識を基礎としつつも)「法学的な思考方法にもとづいて考える」ことにこそ、その真髄があります。本講義では、皆さんがこうした「法学的な思考方法」を身につけ、これからの法学部での学習に臨んでもらう準備をすることが、究極的な目標となります。
 なお、以下で示している授業計画は、現時点での「案」となります。進行状況や皆さんの理解度、得手不得手などに応じて進行速度や講義内容が変更になることもありますので、承知しておいてください。2022年度については、本シラバス執筆時点では、教室での「対面授業」が予定されています。しかし、COVID-19、いわゆる「新型コロナウイルス」の感染状況次第では、講義の方法や進行が変更となる可能性があります。ご了承ください。なんらかの変更が生じる場合には、Course Powerの「お知らせ」機能を用いて連絡しますので、「お知らせ」からの連絡を確認できるようにしておいてください。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
特にありません。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 『ガイダンス』

①本講義の進め方について説明します。
②「法学を学ぶ」ということの意味について、お話ししたいと思います。
2
授業計画/Class 『法学の基礎(1)法の性質-法とは何か』

「法」とはなにか、ということについて、「社会における「法」の機能」、「法規範と道徳などのその他の規範とは何が違うのか」という観点から考えてみたいと思います。
3
授業計画/Class 『法学の基礎(2)法の存在形式-「法源」論入門』

法の使い道?として最も典型的に考えられるのは、裁判所で裁判官が判決を示すときの根拠として用いることでしょう。この法に、事件に適用することができる法のことを、「法源」と言います。こうした「法源」とはなにか、と問われたとき、皆さんは、六法にかかれている法(法律)の条文のことをイメージするかもしれません。もちろん、法律(の条文)は、重要な法源の1つですが、これ以外にも「法源」とされるものには、様々な存在形式が存在します。ここでは、こうした様々な法源について、その概要を説明します。
4
授業計画/Class 『法学の基礎(3)ー法の分類』

法の世界においては、もちろん全体に共通する基本的な考え方が存在しますが、その一方で、法には様々な領域・分野が存在し、それぞれに機能や趣旨・目的、考え方に違いも存在します。したがって、これから皆さんが法学を学んでいくにあたっては、自分がどの領域の方を学んでいて、そこにはどのような特徴(機能・趣旨・考え方)があるのかを知っておくこと、また同じ問題に異なる法領域が関わってくる場合に、そのアプローチの違いを理解しておくことも、理解を深めるために重要となります。
そこで、この回では、法学における様々な視点からの「分類」と、これらの分類によって分けられた領域にどのような特徴があるのかを解説したいと思います。
5
授業計画/Class 『条文を読む(1)-要件事実と効果』

法律の条文は、文字通りの意味だけからは少しわかりにくい構造をしており、このことが、法学を分かりにくいものとている面があるのも事実(だからこそ、「法曹」という専門の実務家が活躍することになる)です。したがって、皆さんがこれから法学を学んでいくためには、「条文の読み方」をきちんと理解しておくことが重要です。この回では、日本の法律における条文が有している、「要件事実」と「効果」という構造について解説したいと思います。
6
授業計画/Class 『条文を読む(2)-条文を読むための基礎知識』

法律の条文を読むために必要な知識として、この回では、①そもそも法律がどのような構造をしていて、自分が読もうとしている条文がどこに位置づけられているのかを理解すること、②法律の条文でしばしば用いられる決まった言い回し、の2つを解説し、条文を読むための基礎知識を確認したいと思います。
7
授業計画/Class 『条文を読む(3)-「解釈」論入門』

法律の条文を適用するにあたっては、(もちろん、文字通りの意味に適用されることが多数ですが)文字通りの意味からは読み解けない部分について、どのように適用したらよいのかを考えることがしばしば必要になります。その際に必要となるのが、法の「解釈」です。この回では、法を解釈するにあたっての基本的な手法について解説します。
8
授業計画/Class 『法の適用-司法制度と紛争解決』

社会における法の使われ方として最も典型的に現れるのは、裁判所における法の適用です。そして、裁判所における裁判の重要な目的は、(法的な)紛争の解決です。そこで、この回では、日本における司法制度の概要と、そこで活躍する法曹実務家の役割について紹介するとともに、裁判所以外での(法的な)紛争解決の仕組みを解説します。
9
授業計画/Class 『憲法とは何か-近代法における「憲法」の意味』

「憲法」というと、多くの人は、「守られるべき人権を定めた法」というイメージを持っているかもしれません。こうした捉え方自体、大いに正しいのですが、「憲法」が有している意味というのはそれだけではなく、国家における基本的な骨格を定める法であり、同時に、近代社会において守られるべき基本的なルールを定めている法でもあります。そして、憲法は「最高法規」として位置づけられる、法の王様でもあり、こうした憲法の性質を理解しておくことは、「法学」を学ぶ上での基本的な前提となります。そこで、この回では、法学を学ぶ前提として必要となる、これらの憲法の意義・性質について考えたいと思います。
10
授業計画/Class 『「法源」論(1)-制定法』

世の中に存在する「法源」の中で、もっとも多く用いられ、重要な位置づけにあるのが、法律を中心とした「制定法」です。しかし、この「制定法」にも、法律だけでなく、様々な種類が存在します。この回では、制定法の様々な種類とその特徴、相互間の関係等について、説明したいと思います。
11
授業計画/Class 『「法源」論(2)-不文法』

世の中の法源で多数を占めるのは「制定法」を中心とした成文法ですが、これに対置される「不文法」にも重要な機能があります。この回では、不文法にどのようなものがあり、どのような性質を有しているのか、解説したいと思います。
12
授業計画/Class 『判例法と判決の「読み方」』

裁判所の判決は、ある種の「法源」としての性質を有しており、特に実務には非常に大きな影響を与えています。したがって、法学を学ぶにあたって、裁判所の判決を理解するというのが非常に重要な意味を持ちます。この回では、裁判所の判決(判例)がもつ「法源」としての位置づけと、実際の判決の読み方について解説します。
13
授業計画/Class 『日本における近代法の変遷』

法は、社会の変化に従ってしばしば改正されていきます。その一方で、長い間改正されることなく用いられ続ける法も珍しくありませんし、近代法社会が成立して以来の基本的な考え方は、現在にも受け継がれています。その意味で、法学を学ぶ際には、(日本における)法がどのような歴史的経過をたどって現在に至っているのかを知っておくことも重要です。この回では、近代以降における日本の法・法学の変遷について解説します。
14
授業計画/Class 『法解釈の基礎-法的三段論法』

法を解釈し、適用する際には、一般に、「法的三段論法」という手法が用いられます。この回では、これまでに学んだ、法を解釈・適用するための基礎知識を踏まえつつ、「法的三段論法」を用いた法の解釈・適用の実践について学びたいと思います。
15
授業計画/Class 『「契約」について考える』

憲法と並ぶ法学のもう1人の王様は、民法でしょう。特に、実社会においては、あらゆる領域で(意識するにせよしないにせよ)「契約」が飛び交うことになります。そこで、この回では「契約」って何なのか、ということについて考えてみたいと思います。
 
事前学習/Preparation 事前に指定された教科書の範囲や、配布されたレジュメを読んでおくこと。
事後学習/Reviewing 講義内容を復習し、講義で学習した内容について問われたときに、きちんと答えられるようにしておくこと。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notes教室での対面授業で実施します。基本的にはレジュメを配布した上での通常の講義形式を予定しています。オンラインでのリアルタイム/オンデマンドの配信等、オンラインの併用は実施しない予定です。

活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 50% 成績評価のうち50%は、定期試験期間中に教場試験を実施し、これを評価要素とします(全クラス共通問題となる予定です)。
2 平常点 In-class Points 50% 不定期な小テスト・課題等を実施し、評価要素(50%)とする予定です。また、学習に対する積極的な意欲も、一定程度、評価要素とする予定です。
なお、小テスト等の詳細な実施方法・日程等については、主にCourse Powerを通じての通知となります。Course Powerからの連絡等を常に確認するようにしておいてください。もちろん、講義(資料)の中でもお知らせはします。
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
コメント
Comments
1 道垣内弘人著 プレップ法学を学ぶ前に 弘文堂 2017.11 9784335313264 1000円+税
2 六法(ポケット六法等のハンディなものでも可) 講義の中で六法を使用します。六法の使い方についてもマスターしてもらいたいと思いますので、Webで法令を検索するのではなく、きちんと六法を手元に置いて講義に参加するようにしてください(六法の種類は問いません)。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
コメント
Comments
 
1 伊藤正己, 加藤一郎編 現代法学入門 有斐閣 2005.3 4641112568 1260円 指定の教科書は、いわば法学の「入門の入門」という書籍です。本書は、「入門の入門」の次のステップである「法学入門」として昔から非常に定評のある、「定番」の本です。分量も手ごろですので、入門書としておすすめです。本講義においても、適宜、本書の参照ページも紹介する予定です。 蔵書情報 / Library information
2 五十嵐清著 法学入門 日本評論社 2017.10 9784535523180 2500円+税 こちらも、(1の伊藤正己先生、加藤一郎先生編のほどではありませんが)古くから定評のある、法学の「入門書」です。1に比べて、少し分量が多く、その分、歴史的な背景や、理論的に踏み込んだ検討が豊富になっています。より深く勉強したい人には、こちらがいいかもしれません。1と同様に、講義中に、適宜参考ページを紹介する予定です。 蔵書情報 / Library information
メッセージ/Message
皆さん、大学入学おめでとうございます。COVID-19、いわゆる「新型コロナウイルス」の感染拡大のため、世間的には「おめでとう」というムードではないことは承知していますが、このような中でも本学にご入学され、私たちと縁をもってくれたことに感謝します。

2022年度の講義は、教室での対面授業を予定していますが、状況によって変化が生じる可能性はあります。各種の連絡にはCourse Powerを用いますので、CoursePowerの使い方には慣れておくようにしてください。よろしくお願いします。