講義内容詳細:商事法特論B

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 商事法特論B
英文科目名/Course Title (English) Topics in Commercial Law B
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 大垣 尚司
英文氏名/Instructor (English) OHGAKI Hisashi

講義概要/Course description
本年度は前期の「銀行取引法」と後期の「商事法特論B」を通じて、卒業後に金融機関、企業の財務部門、金融分野を専門とする法曹や準法曹としてキャリアを積むことを考えている諸君に、『金融と法』を幅広く学んでもらう。それぞれの講義は独立した科目として提供するので、通期で受講する必要はないが、通期で受講すれば理解が深まる可能性はある。

金融と法は、さまざまなファイナンスニーズに応える金融の仕組み、金融商品・サービスを構築するために最適かつ最も効率的な法的枠組みを選択し、実際に、「契約をすることのできる」商品にくみ上げるための技術=法技術(legal engineering)を習得することを目的とする。

「商事法特論B」では、企業ファイナンスの諸領域を幅広くとりあげ、さらに、M&A、デリバティブ・ストラクチャードファイナンスといった先端領域にも言及し、会社法・金融商品取引法、会計、税法といった広義の法がどのような役割を果たしているかを学ぶ。
達成目標/Course objectives
1.金融に関連する民商法の規定を、一般的な法律の授業とは異なる切り口から鳥瞰して理解を深める。
2.金融関連の業規制について概観する。
3.金融機関や商社等に就職するにあたり最低知っておいてほしい企業ファイナンスの知識を身につける。
4.法律については、「六法を手になじませる」ことを通じて、実際に存在するさまざまな取引に法律の条文を適切にあてはめることができるようにする。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
会社法を履修しておくと理解が深まるが、現実には未(不)履修・履修中の者が大半となることが予想されるため、授業中に関連する事項については適宜説明をする。ただし、科目授業を代替するものではない。法科大学院受験や予備試験受験のために高度な学習をしている者も、一般的な講義とは異なる視点から説明するので、実務的な視点から知識を整理するのに役立つ可能性はある。

必ず紙の六法(ポケット六法やデイリー六法)を持参すること。スマホその他の電子媒体による条文参照は授業効果を減殺するので認めない。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class イントロダクション(大学の指示によりオンデマンドで提供します)
1.自営と勤め人と経営者の違い
2.メンバーシップ型からジョブ型に変わると何が変わるのか
3.ファイナンスとは何か
4.法学部生と金融ビジネスのかかわり
5.金融ビジネスにはどんなものがあるか。
6.金融と法のかかわり
7.この授業ではどんなことをやるか。
2
授業計画/Class ☆グループ分け(演習等はグループ単位で進めます)
起業とエクイティーファイナンス①
1.事業とは何か。
2.株式会社とは何か。
3.出資とはなにか。なぜ株式で資金調達するのか。
4.【グループ討議】事業を企画する。
3
授業計画/Class 企業会計のつかみ
1.複式簿記の考え方
2.貸借対照表の構造と意味
3.損益計算書の構造と意味
4.WACCとROA
5.レバレッジ、MM理論
4
授業計画/Class クラウドファンディング
1.クラウドファンディングの法律構成
2.匿名組合とクラウドファンディング
事業計画
1.【演習】エクセルで事業計画を立てる
2.損益とキャッシュフロー
3.なぜ出資の半分までは資本準備金とするのか。
5
授業計画/Class 定款の作成
1.経営者と従業員の違い
2.ガバナンスの意味と設計
3.定款サンプルを読み込む
4.【グループ作業】企画にした事業を行う株式会社の定款を作成する。
6
授業計画/Class ファンディングラウンド
1.投資ファイナンスと商業ファイナンスの違い
2.4つのファンディングラウンドの概要
増資による資金調達
1.増資の手続はなぜかくも複雑なのか
2.株式の評価
7
授業計画/Class 市場ファイナンス
1.上場の意味
2.金融商品取引法、上場会社をめぐる規律
3.決算発表が4回しかないのに株価は常時変動するのはなぜか−CAPM
4.時価発行増資と証券会社の役割
8
授業計画/Class デット調達
1.運転資金調達と融資枠契約
2.社債による投資ファイナンスと証券会社の役割
3.社債と借入の違い
4.シンジケートローンの仕組み
5.【演習】シンジケートローン契約を読む
9
授業計画/Class 事業承継とM&A
1.経営承継とM&A
2.種類株式と経営承継
3.合併と会社分割
4.合併比率の計算と対価
10
授業計画/Class タックスファイナンスとしてのリース
1.ファイナンスリースの仕組み
2.なぜリースにするのか。
3.担保とリースの違い
4.レバレッジドリース
5.匿名組合によるタックスポジション流動化
11
授業計画/Class デリバティブ入門:先物とオプション①
1.デリバティブとは何か
2.純粋デリバティブ契約の仕組みとスワップ
3.先渡契約と先物契約
4.先物のプライシング
5.市場と「先物」
12
授業計画/Class デリバティブ入門:先物とオプション②
1.オプションとは何か
2.コールとプット
3.オプションプライシングのつかみ
4.身近にあるオプション
5.組合せオプションとエキゾチックオプション
13
授業計画/Class 新株予約権とファイナンス
1.増資における新株予約権の活用
2.上場会社とM&A−アービトラージとしての企業買収
3.ポイズンピルによる買収防衛
4.新株予約権付社債の活用
5.コンティンジェントキャピタル
14
授業計画/Class 報酬と企業財務、株価連動報酬
1.ベンチャーとストックオプション
2.ストックオプションと税
3.上場企業の役員に株価連動報酬が普及したのはなぜか
4.SDGとリストリクテッドストック
15
授業計画/Class 【総括とディスカッション】
「株式会社は誰のためにあるのか」という問いかけへの問いかけ
 
事前学習/Preparation 関連する会社法の条文を読んでくる。
事後学習/Reviewing 学習した内容を会社法等の教科書の該当部分で復習する。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notesカバーすべきトピックが多いため基本的には講義形式で行うが、ソクラティックメソッドを採用してできるかぎり対話形式で授業を進める。法律の授業と異なり、細かな知識を暗記してもあまり意味がないが、一方で、授業に参加しないと内容を理解し、金融独特の思考方法を身につけることは難しいことに注意すること。
教科書は、金融ビジネスについて具体的なイメージを持ってもらうために、事前学習で読んでもらう。授業の内容については別途教材を配布するが、レジュメや資料が中心となる。このため、授業に出席せず教科書だけを読んで試験に臨んでも全く解答できない可能性がある。
対面授業であるが、第1回目についてはオンデマンドで配信する。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 60% グループ単位での課題検討を通じた授業貢献を評価する。
2 レポート Report 40% 作成した課題を個人ごとにまとめて、事業企画書を作成しレポートとして提出してもらう。追加的な課題を出すことがある。
教科書/Textbooks
 著者名
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タイトル
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出版年
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ISBN価格
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1 紙の六法(ポケット六法やデイリー六法)
2 大垣尚司 金融と法 有斐閣 2010 9784641135635 4000 現在改訂のために絶版中なので、必要に応じてPDFとして提供する。
3 大垣尚司 金融と法Ⅱ デリバティブ・金融工学 勁草書房 2022 4326404035 3850
4 大垣尚司 金融から学ぶ会社法入門 勁草書房 2017 9784326403271 4000 改訂中で版元品切れのため、必要に応じてPDFで提供する。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 大垣尚司著 金融から学ぶ民事法入門 勁草書房 2013.12 9784326402861 2900円+税 蔵書情報 / Library information
2 大垣尚司著 金融から学ぶ会社法入門 勁草書房 2017.6 9784326403271 4000円+税 蔵書情報 / Library information
3 大垣尚司著 49歳からのお金 日本経済新聞出版社 2012.5 9784532355203 1600円+税 蔵書情報 / Library information
4 大垣尚司著 電子債権 日本経済新聞社 2005.10 4532351618 2800円 蔵書情報 / Library information
メッセージ/Message
学部ではゼミを担当しておりませんので、就職や進学その他でご相談があれば気楽にメールをいただければslack等でチャットができるようにいたします。
その他/Others
以下の経歴に基づく実務経験を講義に反映させる。
講師経歴
1982 東京大学法学部卒 1985 米国コロンビア大学法学修士 2011 博士(法学)
1982 日本興業銀行 1998 興銀フィナンシャルテクノロジー取締役業務企画部長
2000 アクサ生命保険専務執行役員
2003 日本住宅ローン株式会社代表執行役社長・立命館大学法学部教授
2016 立命館大学金融ジェロントロジー/法・教育研究センター長
2017 青山学院大学法務研究科教授 2018 同金融技術研究所長(兼) 
2021 同法学部教授・金融技術研究所長(現)
主な公職
2005 一般社団法人日本モーゲージバンカー協議会代表理事会長(現)
2006 一般社団法人移住・住みかえ支援機構代表理事(現)
2011 金融審議会専門委員
2013 株式会社民間資金等活用事業推進機構社外取締役・支援委員長代行
2018 ミャンマー建設・住宅・インフラ開発銀行総裁特別顧問
キーワード/Keywords
実務経験