講義内容詳細:法と経済

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 法と経済
英文科目名/Course Title (English) Law and Economics
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 岡田 直己
英文氏名/Instructor (English) OKADA Naoki

講義概要/Course description
【1】次の段落の説明を読むと、「経済学(数式)かあ・・・。難しそうだあ。というか無理だあ。」と嫌悪感を抱く学生が少なくないだろう。しかし、ここで一度冷静になり、ちょっと長い説明ではあるが、とりあえず最後まで読んでみてほしい。

【2】『法と経済学』という学問分野は、「法の経済分析」を中心として展開してきたものであり、法制度の設計・運用の内容や効果について経済学の理論を用いて分析する学際的分野である。法学と経済学の間には、問題意識や分析手法、価値観など多くの違いが厳然と存在するだけでなく、2つの学問分野が社会経済上の問題に対して提示する答えも違うということは少なくない。しかし、両者は「一緒に仲良く同じ問題を考えることはできないんですね・・・。」という敵対的姿勢をとっているものではない。『法と経済学』は、「法制度は人々の暮らしや仕事に深く関わる大切なものだから、法学と経済学がお互いに知恵を出し合ってその問題を考えてみよう。」という協力的姿勢をとる学問である。言い換えれば、『法と経済学』の基本的特徴は、法律や判例で構成される法制度の経済的価値を理解しようと試みるなかで、法学(法解釈学)の意義と限界を探りつつ、法学の理解や発展における経済学の貢献も追求することにある。

【3】ここまでの説明を読んで、「やはり無理だ・・・。」とビビった学生が少なくないだろう。しかし、ここでもう一度冷静になってほしい。なぜならば、本科目の担当教員は、法学部法律学科を卒業した法学部の専任教員であり、その専門分野は独占禁止法を中心とする「経済法」である(「経済」という表現が付くが、数式等を駆使する「経済学」を扱っているわけではない。「経済学」の修得経験アリというだけのことである)。このような担当教員が展開する本科目の目的・内容は何だろうか?

【4】本科目の目的は、『法と経済学』という学問分野をマスターすることではなく、「この問題は、法学ではこう考えるけれど、経済学の見方を使うとこんな考え方もあるんだよ!」という新鮮な視点を獲得することである。「経済学」が登場するのは、そのような目的に必要な限りである。第2回・第3回の講義では「法学部生もわかる経済学の基礎知識」と題し、本科目の講義内容を理解する上で必要な初級レベルの経済学を説明するため、予備知識を一切必要としない。そして、基礎知識の準備を整えた後で、民法(契約法・不法行為法)、労働法、独占禁止法という分野を取り上げて、「こんな考え方もあるんだよ!」の具体例に触れる。したがって、本科目の内容は、法学を法学として真正面から受け止めて学ぶのではなく、法学を「相対化」して(やや斜めに構えて、あるいは、適度な距離をとって)、法学という学問分野との付き合い方を見直すものとなる。
達成目標/Course objectives
本科目の受講を終えたとき、「法学部生だけど、ちょっと経済的な見方を使って法律の話もできるよ!」と得意げな気持ちになれること。本科目は後期授業期間に開講するが、入学半年後の1年生が本科目を受講した場合、法学部の授業とのマンネリ化した(嫌気が差した)お付き合いに転換のきっかけがもたらされるかもしれない。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
なし。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ガイダンス-法学と経済学による価値追求(「法と経済学」)とは何か-【オンライン授業(オンデマンド型)】
事前学習/Preparation このシラバス(講義内容詳細)を確認しておくこと。
事後学習/Reviewing 講義資料を復習すること。
2
授業計画/Class 法学部生もわかる経済学の基礎知識①
事前学習/Preparation 配布資料をを読むこと。
事後学習/Reviewing 講義資料を復習すること。
3
授業計画/Class 法学部生もわかる経済学の基礎知識②
事前学習/Preparation 配布資料を読むこと。
事後学習/Reviewing 講義資料を復習すること。
4
授業計画/Class 【民法(契約法)】「契約を守る」とは①
事前学習/Preparation 第4回~第6回参考資料について、CASE 1 を読解の上、解答をコースパワーで提出すること。
事後学習/Reviewing 講義資料を復習するとともに、CASE 1の理解を深めること。
5
授業計画/Class 【民法(契約法)】「契約を守る」とは②
事前学習/Preparation 配布資料を読むこと。
事後学習/Reviewing 次回実施のミニレポートへ向けて、「契約法を守る」の講義資料を復習すること。
6
授業計画/Class 【民法(契約法)】「契約を守る」とは③
事前学習/Preparation 第4回~第6回参考資料について、CASE 2 を読解の上、解答をコースパワーで提出すること。
事後学習/Reviewing 講義資料を復習するとともに、CASE 2の理解を深めること。
7
授業計画/Class 【民法(不法行為法)】「損害を賠償する」とは①
事前学習/Preparation 民法〔債権〕の不法行為(第3編第5章;709~724条の2)について、他科目の教科書または図書館の蔵書を読み、不法行為法の基本事項を確認すること。
事後学習/Reviewing 次回実施のミニレポートへ向けて、「損害を賠償する」の講義資料を復習すること。
8
授業計画/Class 【民法(不法行為法)】「損害を賠償する」とは②
事前学習/Preparation 配布資料を読むこと。
事後学習/Reviewing 講義資料を復習すること。
9
授業計画/Class 【労働法】「働くこと」と賃金・解雇規制①
事前学習/Preparation 配布資料を読むこと。
事後学習/Reviewing 講義資料を復習すること。
10
授業計画/Class 【労働法】「働くこと」と賃金・解雇規制②
事前学習/Preparation 配布資料を読むこと。
事後学習/Reviewing 次回実施のミニレポートへ向けて、「『働くこと』と賃金・解雇規制」の講義資料を復習すること。
11
授業計画/Class 【労働法】「働くこと」と賃金・解雇規制③
事前学習/Preparation 配布資料を読むこと。
事後学習/Reviewing 講義資料を復習すること。
12
授業計画/Class 【独占禁止法】「ビジネス」と自由競争経済秩序①
事前学習/Preparation 配布資料を読むこと。
事後学習/Reviewing 講義資料を復習すること。
13
授業計画/Class 【独占禁止法】「ビジネス」と自由競争経済秩序②
事前学習/Preparation 配布資料を読むこと。
事後学習/Reviewing 次回実施のミニレポートへ向けて、「『ビジネス』と自由競争経済秩序」の講義資料を復習すること。
14
授業計画/Class 【独占禁止法】「ビジネス」と自由競争経済秩序③
事前学習/Preparation 配布資料を読むこと。
事後学習/Reviewing 授業内試験へ向けて、本科目の講義資料を復習すること。
15
授業計画/Class 授業内試験
事前学習/Preparation 本科目の講義資料を復習すること。
事後学習/Reviewing 試験答案と比較しながらフィードバックシートを読むこと。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 40% 授業計画の第4回以降に取り上げる4つの法分野について、1回ずつミニレポート課題を設定し、講義内容のポイントに関する理解を確認します。ミニレポートは授業時間中に15分間で実施します。
2 試験 Exam 60% 講義及びミニレポート課題で扱った問題に関する理解を確認するものとします。なお、授業内試験として実施します。
教科書/Textbooks
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1 授業各回の内容に応じて、担当教員がコースパワーで配布します。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
 
1 細江守紀 法と経済学の基礎と展開: 民事法を中心に 勁草書房 2020
2 大内伸哉ほか編 解雇規制を問い直す-金銭解決の制度設計- 有斐閣 2018
3 岡田羊祐ほか編 独禁法審判決の法と経済学-事例で読み解く日本の競争政策 東京大学出版会 2017
4 小田切宏之 競争政策論〔第2版〕 日本評論社 2017
5 神林龍 正規の世界・非正規の世界 慶應義塾大学出版会 2017
6 飯田高 法と社会科学をつなぐ 有斐閣 2016
7 田中亘ほか編 企業統治の法と経済 有斐閣 2016
8 ハウェル・ジャクソンほか 数理法務概論 有斐閣 2014
9 柳川隆ほか編 エコノリーガル・スタディーズのすすめ 有斐閣 2014
10 大内伸哉・川口大司 法と経済で読みとく雇用の世界 有斐閣 2012
11 スティーブン・シャベル 法と経済学 日本経済新聞出版社 2010
12 岡田羊祐ほか編 独占禁止法の経済学-審判決の事例分析 東京大学出版会 2009
13 神林龍 解雇規制の法と経済 日本評論社 2008
14 柳川範之 法と企業行動の経済分析 日本経済新聞社 2006
授業関連情報/Class-related information
 件名/Title内容/Contents備考/Memo
1 担当教員連絡先 n_okada@als.aoyama.ac.jp
メッセージ/Message
本科目は、ミニレポートが十分な内容であれば、授業内試験一発で低い成績評語とはならないなど、授業に出席して丁寧に学習する「積上方式」を採用しています。成績評価方法の記載のとおり、ミニレポートは、正誤問題というテストではなく、講義内容に関する要点整理や意見表明という「理解を確認」するものとなっています。
「知ること」は覚えることではなく「考えること」。法学を「相対化」して考えることの面白さを感じてもらえればよいでしょう。

【前年度からの変更】
本科目は担当教員によるものとして2年目になりますが、前年度(2021年度)は、授業中の受講者の反応を見た限り、第2回~第3回「法学部生もわかる経済学の基礎知識」と第4回~第6回「【民法(契約法)】『契約を守る』とは」の内容が若干難しすぎたようです。このため、本年度の授業設計においては、当該範囲の難易度を下げるように調整しています。
その他/Others
本科目の受講に必要となる資料その他すべての情報は、コースパワーで配信します。また、担当教員からの連絡・指示等もコースパワーで行います。本科目に関する質問・相談等は、担当教員へコースパワーまたはメールでお願いします。
キーワード/Keywords
法と経済学     民法     労働法     独占禁止法