講義内容詳細:財務分析論Ⅰ

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 財務分析論Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Financial Analysis Ⅰ
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 佐藤 靖
英文氏名/Instructor (English) SATO Osamu

講義概要/Course description
[授業の進め方]
 財務分析論Ⅰは原則的に対面授業を行います。ただし、オンライン授業(オリエンテーションとコースパワーを用いたクイズ)も一部組み込みますので、具体的な授業方法については、下記の「授業方法 / Method of instruction」を参照してください。

[講義内容]
 私は企業経営者の方々とお会いする機会がしばしばあります。企業経営を研究する一学徒として、大変多くのことを学ばせていただいております。ただ時折、首を傾げてしまうような意見を聞くこともあります。

 「売上高を上げることが何よりも重要である。売上さえあげればすべて上手く行く。」
 「良い製品を開発すれば必ず売れる。」
 「欠品をおこしてはいけないので、常に在庫を多く確保している。」

 このような意見は、一見、当り前のことのようにも聞こえます。しかし、このことだけを意識して経営を行うと、大火傷(赤字や倒産)をしてしまうおそれがあります。それでは何故、大火傷に繋がってしまうのでしょうか。それを知るためには、是非とも財務分析を学ぶ必要があります。
 企業の盛衰は「分析力」にかかっているといっても過言ではありません。全く同じ商品を扱う企業であっても、分析力に差があれば、その業績は全く異なったものとなりえます。財務分析は企業分析の核となるものであり、経営者さらには企業活動に関わる全ての人々にとって必須アイテムなのです。
 具体的に言えば、財務分析とは財務諸表等の会計データをもとに企業の状況を解読する手法です。数字の羅列とも思える会計データは、財務分析のプロセスを経ることにより、企業の状況を雄弁に語ってくれる宝の情報になります。時には経営者の性格を推測することさえ可能です。その楽しさを受講生のみなさんと一緒に味わっていきたいと思います。

 近年のAIの進歩・普及は目覚ましいものがあります。各種データの分析は、今後ますますAIによって行われることなるでしょう。数値データを扱う財務分析はAIとの親和性が高いと言えます。ただし、企業の置かれた状況を踏まえた分析結果の解読は言わば「職人技的な総合力」が必要になります。さらには、中長期の経営の方向性をも視野に入れた意思決定はAIではなく経営者によって行われることになります。本講義では、分析手法の解説のみならず、経営者という人間によって行われる解読・意思決定の領域にも力点をおいて講義を進めることとします。

 なお、講義に際しては、実際の企業経営者への助言経験およびその内容を踏まえて、理論面のみならず実践面にもできるだけ言及していきたいと思っております。分析に基づく科学的経営の実践例を取り上げ、実学としての財務分析を論ずる予定です。

 財務分析論Ⅰでは、損益構造分析と利益率分析を中心に講義を進めます。なお、財務分析論Ⅰと財務分析論Ⅱの講義内容は連続していますので、財務分析論Ⅰの受講者は財務分析論Ⅱも受講することが望ましいです。
達成目標/Course objectives
財務分析領域のうち、特に「損益に関する分析」の基礎理論を学び、経営者の視点から意思決定への活用の仕方を考える。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
アカウンティング基礎Ⅰ・Ⅱ
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class プロローグ―企業経営における財務分析の意義
 授業のオリエンテーションを兼ねるので、この回の授業内容を受講科目選択の参考にされたい。なお、この回はオンライン授業(オンデマンド型)を行うので、授業への参加方法等についてはコースパワーを参照すること。
事前学習/Preparation 教科書の「はじめに」を読んでおくこと。加えて、参考書の第1章を通読しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考にして、改めて、教科書の「はじめに」を読んで講義内容を確認すること。加えて、参考書の第1章を再度通読することが望ましい。
2
授業計画/Class 損益構造分析に用いられる主要な財務分析指標―概論
事前学習/Preparation 教科書1-25頁を通読し、損益を「動的」に分析することの意味を理解するように努め、疑問点を明らかにしておくこと。この事前学習を効率的に行うためには、参考書の第1章の通読が効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書1-25頁を再度通読すること。そのうえで、現段階で残る疑問点を明らかにすること。
3
授業計画/Class 売上高の増減によるレバレッジ効果―DOL
 1%の売上高の変化は利益にどれだけの影響をもたらすか。
事前学習/Preparation 教科書6-11頁を熟読し、疑問点を明らかにすること。この事前学習を効率的に行うためには、参考書22-28頁を同時に熟読することが効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書6-11頁を再度熟読すること。加えて、設例1-1(7頁)のデータを用いてDOLを実際に算出してみること。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。
4
授業計画/Class 変動費率の変化によるレバレッジ効果―DVL
 1ポイントの変動費率の変化は利益にどれだけの影響をもたらすか。
事前学習/Preparation 教科書11-15頁を熟読し、疑問点を明らかにすること。また、DOLとの違いを理解するために、教科書6-11頁を再度通読しておくこと。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書11-15頁を再度熟読すること。加えて、設例1-1(7頁)のデータを用いてDOLとDVLを実際に算出し、DOLとDVLの違いに関する理解を深めること。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。
5
授業計画/Class 固定費の増減によるレバレッジ効果―DFL
 1%の固定費の変化は利益にどれだけの影響をもたらすか。
事前学習/Preparation 教科書15-18頁を熟読し、疑問点を明らかにすること。また、DOLやDVLとの違いを理解するために、教科書1-15頁を再度通読しておくこと。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書15-18頁を再度熟読すること。加えて、設例1-1(7頁)のデータを用いてDOL、DVL、DFLを実際に算出し、これら3つのレバレッジ指標の違い(特に各レバレッジの効き具合の差異に着目)に関する理解を深めること。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。
6
授業計画/Class 損益構造分析の統合指標としてのMSR―各種レバレッジ指標との関係
 MSRの意味と実際の活用例。
事前学習/Preparation 教科書18-25頁を熟読し、疑問点を明らかにすること。なお、この授業では逆数を用いた数式を扱うため、高校で学んだ逆数の意味およびその記号について復習しておくこと。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書18-25頁を再度熟読すること。加えて、設例1-1(7頁)のデータを用いてMSRを実際に算出し、当該財務分析指標に関する理解を深めること。さらには、3つのレバレッジ指標を再度算出し、25頁の数式の意味内容を再確認すること(この事後学習には、参考書29-34頁を通読することが役に立つ)。
この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。
7
授業計画/Class 質疑応答と第1回クイズ(小テスト) オンライン授業(オンデマンド型)
 クイズをコースパワーに提示するので、授業時間中に解答すること。通信環境等の影響による未解答を防ぐため、解答時間は余裕を持たせて設定している。詳しくはコースパワーを参照。なお、授業時間の初めに質問に回答する時間を設ける。質疑の授業方式としてはオンライン授業(リアルタイム型)を予定している。詳しくはコースパワーを参照。
事前学習/Preparation 講義ノートおよび教科書(第1章1-25頁)を参照して第6回までの授業内容を復習すること。
事後学習/Reviewing クイズの設問と照らし合わせながら、ノートおよび教科書(第1章1-25頁)を参照して第6回までの授業内容を復習すること。
8
授業計画/Class 利益率分析に用いられる主要な財務分析指標―概論
授業の最初に前回のクイズの総評を行い、採点結果を踏まえて補足説明を行う。
事前学習/Preparation 教科書47-66頁を熟読し、利益率分析の概要を把握すること。この事前学習を効率的に行うためには、参考書71-106頁を同時に通読することが効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書47-66頁を再度熟読すること。加えて、新聞や雑誌等に掲載されている記事から利益率分析に関わるもの(ROAやROEに関する記事)を探し、それを理論的に解釈することを試みることが望ましい。
9
授業計画/Class 総資産の運用効率を示すROA
 貸借対照表の借方に目を向けた分析指標
事前学習/Preparation 教科書48-54頁を熟読し、疑問点を明らかにすること。この学習を効率的に行うためには、参考書84-91頁を同時に熟読することが効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書48-54頁を再度熟読すること。その際、「事業利益」概念の学習に焦点をあてることが理解を深める。加えて、EDINETで有価証券報告書をダウンロードし実際の財務諸表データを用いてROAの算出を試みることが望ましい。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。 
10
授業計画/Class 企業活動の総合効率を示すROE
 貸借対照表の借方と貸方の両面に目を向けた指標
事前学習/Preparation 教科書54-57頁を熟読し、疑問点を明らかにすること。この学習を効率的に行うためには、参考書92-97頁を同時に熟読することが効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書54-57頁を再度熟読すること。その際、「事業利益」と「経常利益」という二つの利益概念の違いに着目することが理解を深める。加えて、EDINETで有価証券報告書をダウンロードし、実際の財務諸表データを用いてROEの算出を試みることが望ましい。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。 
11
授業計画/Class ファイナンシャル・レバレッジ―ROAとROEの関係
 ROEの値が同じでも事業内容や財務戦略が大きく異なることもある。
事前学習/Preparation 教科書47-58頁を通読してROAとROEについて復習したうえで、教科書58-65頁を熟読して疑問点を明らかにすること。この学習を効率的に行うためには、参考書97-102頁を同時に熟読することが効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書47-65頁を再度熟読すること。その際、ROAとROEの差異が生じる要因(変数)に着目することが理解を深める。加えて、EDINETで有価証券報告書をダウンロードし実際の財務諸表データを用いてROA、ROE、FLEVの算出を試みることが望ましい。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。 
12
授業計画/Class 質疑応答と第2回クイズ(小テスト) オンライン授業(オンデマンド型)
 クイズをコースパワーに提示するので、授業時間中に解答すること。通信環境等の影響による未解答を防ぐため、解答時間は余裕を持たせて設定している。詳しくはコースパワーを参照。なお、授業時間の初めに質問に回答する時間を設ける。質疑の授業方式としてはオンライン授業(リアルタイム型)を予定している。詳しくはコースパワーを参照。
事前学習/Preparation 講義ノートおよび教科書(第2章47-67頁)を参照して第8回から第11回までの授業内容を復習すること。
事後学習/Reviewing クイズの設問と照らし合わせながら、ノートおよび教科書(第2章47-67頁)を参照して第8回から第11回までの授業内容を復習すること。
13
授業計画/Class 財務分析の実際―上場企業の損益構造分析とシミュレーション
 これまで学んだ財務分析指標を組み込んだ財務分析プログラムを用いて、損益に関する財務分析の実際のプロセスを追体験してもらう。なお、データ取得方法としてのEDINETの使い方についても解説する。
 なお、授業の最初に前回のクイズの総評を行い、採点結果を踏まえて補足説明を行う。
事前学習/Preparation 教科書1-67頁を熟読し、これまでに学習した内容を復習しておくこと。特に、テキスト(43-44頁)にまとめて提示している数式1-1~数式1-14、およびテキスト(66-67頁)にまとめて提示している数式2-1~数式2-4の意味を再確認すること。
事後学習/Reviewing コースパワーを通じて、授業中で用いた分析プログラム(授業復習用に編集したもの)を受講者全員に提示する予定である。このプログラムをダウンロードして、受講者自身が選択した企業について自主的に分析を進めて欲しい。
14
授業計画/Class 授業の総まとめ
 これまでの授業を振り返り、期末試験に向けて、特に集中的に復習すべきポイントについて解説する。
事前学習/Preparation 教科書1-67頁を熟読し、これまでに学習した内容を復習しておくこと。特に、テキスト(43-44頁)にまとめて提示している数式1-1~数式1-14、およびテキスト(66-67頁)にまとめて提示している数式2-1~数式2-4の意味を再確認すること。
事後学習/Reviewing 質疑応答の内容も踏まえつつ、教科書1-67頁を熟読し、これまでに学習した内容を復習しておくこと。特に、テキスト(43-44頁)にまとめて提示している数式1-1~数式1-14、およびテキスト(66-67頁)にまとめて提示している数式2-1~数式2-4の意味を再確認すること。
15
授業計画/Class オフィスアワー(質問に対する個別対応)
本日は、本講義全般に関する質問を個別に受け付けます。質問のある学生は佐藤研究室(8号館7階724号室)に来室してください。質問に対する説明の時間を確保するため、来室時間は16時までとします。
なお、新型コロナの感染状況によっては、オンラインで第3回クイズを実施することもありえます。その際は、CPから受講者に連絡します。
事前学習/Preparation 第1回から第14回までの講義ノートを参考に、教科書の第1章(第2節まで)と第2章(全節)を再度熟読して本授業で学んだ内容を総復習すること。特に、授業で取り上げた企業の財務分析(損益構造分析と利益率分析)を自分自身でも行ってみること。
事後学習/Reviewing 事前学習に同じ。なお、期末試験に向けて、財務分析指標(教科書43-44頁、66-67頁)の数式とその意味内容に関する理解を深めておくこと。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notes 財務分析論Ⅰでは対面授業を行います。オンライン授業としては下記を予定しております。なお、授業方法が変更される場合は予め予告します。

第1回授業 オンデマンド型
 授業のオリエンテーション動画をコースパワーにアップしますので視聴してください。動画は履修登録期間終了日までアップします。
第7回授業 第12回授業 第15回授業 クイズ(オンデマンド型)
 コースパワーにクイズをアップしますので、授業時間内に解答してください。ただし、ネットワークトラブルによる未解答が生じないように、回答時間には余裕を持たせます。(詳細はコースパワーを参照)
 なお、クイズを提出する回に対面またはオンラインで質問を受け付ける予定です。

◇ 注意事項
 第1回授業を除いて動画の配信は行いません。
 クイズの日程が変更される場合は予め予告します。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 80% 期末試験を行いその採点結果に基づき記載の割合で成績評価に反映させる。
2 平常点 In-class Points 20% 授業中のクイズの採点結果に基づき記載の割合で成績評価に反映させる。
課題(試験やレポート等)に対するフィードバックの方法/Feedback methods for assignments (exams, reports, etc.)
クイズの採点結果については、クイズ出題日の週末までに開示する。
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
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出版社
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出版年
Published year
ISBN価格
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1 佐藤 靖 『経営意思決定のための財務分析――利益とキャッシュの実践管理』 中央経済社 2013年 9784502474408 2,200円+税
参考書/Reference books
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ISBN価格
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1 佐藤 靖 『経営者が知っておきたい実践財務分析―利益とキャッシュの増やし方』 中央経済社 2007年 9784502279805 2,200円+税
メッセージ/Message
アカウンティング基礎Ⅰ・Ⅱで学んだ内容を復習しておくこと。
できるだけアップデートなテーマを取り上げる予定です。そのために授業内容(講義順序やクイズ日程を含む)がシラバスと異なることもありえます。その際には授業中もしくはコースパワーでお知らせします。
その他/Others
教科書を必ず持参してください。
授業中およびクイズや期末試験の解答に際して、受講生自身に実際に計算をしてもらいます。期末試験ではスマートフォン等の電卓機能の使用は禁止されていますので、必ず電卓を用意しておいてください。
キーワード/Keywords
財務分析         経営分析     企業分析     企業経営     経営意思決定