講義内容詳細:ゲーム理論Ⅰ

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) ゲーム理論Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Game Theory Ⅰ
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 保苅 尚
英文氏名/Instructor (English) HOKARI Hisashi

講義概要/Course description
 今やゲーム理論は単なる経済学の分析ツールにとどまらず、広くその他の社会科学や生物学の分野でも注目を浴びている。本講義では下記テキストの第1章から第4章までの経済主体にとって情報が完全であるゲームを取り上げる。授業計画は以下に示す通りであるが、例えば、テキスト第1章を扱う際には、独占企業がいかにしてライバル企業の参入を阻止するかという参入阻止ゲームを基に、現在の不況下で多くの企業が実施している低価格化戦略がなぜうまくいかないのかを考察する。このように講義での議論を通して、いかにして現実経済を理解するかという点にも力点を置いて授業を進めていく。(なお、本「ゲーム理論Ⅰ」と後期開講の「ゲーム理論Ⅱ」でゲーム理論の基本的な考え方は全てカバーできるように講義は構成してある。)
達成目標/Course objectives
 我々が目にする多くの経済事象は、しばしば不完全競争的な特徴を有している。世界に誇る日本の代表的な企業であるトヨタをはじめ多くの大企業はこのような不完全競争市場を活躍の場としていると考えて、まず間違いない。そのため、これらの企業の行動を理解するには、不完全競争市場の理解が不可欠であり、それにはそこでの行動を特徴づける戦略的行動-少人数の経済主体間で行われる、自己の行動がいかに他者の行動に影響を与えるかを読み合いながらの行動-の理解が重要となる。このような戦略的行動の理解・分析の基礎を与えるものが、本講義で取り上げるゲーム理論である。本講義では、ゲーム理論を基礎から丁寧に解説する。各受講者が、ゲーム理論で取り上げる代表的なゲームの理解を通じて、現実経済のより良い理解が可能になる論理的思考力を身につけられるようになることを授業の到達目標とする。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
・ 「社会科学のための数学入門Ⅰ・Ⅱ」を履修済みであれば、より好ましい。(ただし、微分の基本的な知識があれば(2次関数の微分ができれば)履修に支障はないし、たとえ2次関数の微分ができなくとも、試験問題を解答する際に大きな支障はない。)
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 【オンライン授業(オンデマンド型)】
第1回 オリエンテーション(評価方法・授業の進め方・必要な数学レベル等の確認)
2
授業計画/Class 第2回 テキスト1.1「寡占」(その1);独占価格の導出等のミクロ経済学の復習を行う。
3
授業計画/Class 第3回 テキスト1.1「寡占」(その2);独占市場に新規参入する企業の最適行動について議論する。
4
授業計画/Class 第4回 テキスト1.2「参入阻止価格」(その1);展開形表現のゲームを使い、ゲーム理論の議論の進め方に慣れる。
5
授業計画/Class 第5回 テキスト1.2「参入阻止価格」(その2);「囚人のジレンマ」をキーワードに値下げ競争の本質についての理解を深める。
6
授業計画/Class 第6回 テキスト2.1「戦略形表現」/2.2「ナッシュ均衡と最適反応」;「囚人のジレンマ」ゲームに代表される戦略形表現とナッシュ均衡について学ぶ。
7
授業計画/Class 第7回 テキスト2.3「支配戦略」/2.4「支配される戦略のくり返し削除」;ナッシュ均衡と支配戦略との関係について学ぶ。
8
授業計画/Class 第8回 テキスト3.2「展開形表現」/3.3「バックワード・インダクション」(その1);再度展開形表現ゲームを取り上げ、それをバックワード・インダクションを用いて解いてみる。
9
授業計画/Class 第9回 テキスト3.2「展開形表現」/3.3「バックワード・インダクション」(その2);サブゲームに注目することで、バックワード・インダクションについて再考する。
10
授業計画/Class 第10回 テキスト3.4「ナッシュ均衡」/3.5「サブゲーム完全均衡」;ナッシュ均衡とサブゲーム完全均衡およびバックワード・インダクションの解との関係について学ぶ。
11
授業計画/Class 第11回 ここまでの理解を確認するための中間試験を実施。
12
授業計画/Class 第12回 中間試験の解説とテキスト3.7「裁量かルールか」;最初に前回行った中間試験の解説を行う。その後、3章のまとめとして、これまで学んだ知識を利用して、戦後日本の典型的な規制方式である、弾力的な法律の運用による「裁量的政策運営方式」の功罪を、細かい部分まで規定した法律に基づく「ルールによる政策運営方式」との比較で検討する。
13
授業計画/Class 第13回 テキスト4.2「最後通牒ゲーム」;労使間の賃金交渉に代表される交渉ゲームの基礎として一段階の交渉ゲームを学ぶ。
14
授業計画/Class 第14回 テキスト4.3「2段階の交渉」;労使間の賃金交渉に代表される交渉ゲームの基礎として二段階の交渉ゲームを学ぶ。
15
授業計画/Class 第15回 期末試験を実施する。
 
事前学習/Preparation ①当日やるテキストの関連部分を読んでおくこと。
事後学習/Reviewing ①その日にやったテキストの関連部分等の見直しをしておくこと。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notes本授業は対面授業(通常型)で行う。その際、極力学生に質問を投げかけ、双方向授業となるよう心掛ける。そのため、受講者には事前学習でのテキストの精読を求める。また、授業進度に合わせ、テキスト内外の練習問題を取り上げ、学生間でのディスカッションの機会をできる限り多く提供する。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 100% テキスト・ノート等の持ち込み不可の中間試験と期末試験の合計点により評価を行う。
中間試験:30% 期末試験:70%
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
価格
Price
1 梶井厚志・松井彰彦 ミクロ経済学 戦略的アプローチ 日本評論社 2000年 ¥2,530
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
価格
Price
 
1 ロバート・ギボンズ著、福岡・須田訳 経済学のためのゲーム理論入門 岩波書店 2020年 ¥3,520
メッセージ/Message
・ 成績評価方法や授業の進め方についての確認・注意を行うので、履修希望者は必ず初回の講義に参加すること。
講義中の私語や携帯メールのチェック等は厳禁とする。
その他/Others
就職活動等のやむをえない事情によって試験を受けられない学生には、代替措置としての小レポート等を課すので、事前に必ず申し出ること。(大学としての取り決めがある場合は、そちらを優先。)
キーワード/Keywords
ゲーム理論         完全情報