講義内容詳細:ゲーム理論Ⅱ

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) ゲーム理論Ⅱ
英文科目名/Course Title (English) Game Theory Ⅱ
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 保苅 尚
英文氏名/Instructor (English) HOKARI Hisashi

講義概要/Course description
 今やゲーム理論は単なる経済学の分析ツールにとどまらず、広くその他の社会科学や生物学の分野でも注目を浴びている。本講義では下記テキストの第5、6章の経済主体にとって情報が不完全であるゲームを議論する。
 情報化社会と呼ばれる現代社会では、情報の果たす役割の大切さがしばしば指摘されるが、現実社会において経済主体が意思決定に必要な情報を全て有しているとは考えにくい。このような不完全な情報下でのゲームの分析を行うのが第5章である。そこでは、日本でも多くの大企業では一般的となった、伝統的な年功序列型賃金から「能力給」への賃金体系の見直しの分析を行う。更に、その応用例として、司法試験方式からロー・スクール方式への移行がなされている司法制度改革の成否についても議論する。
 第6章では、最近ネット・オークションで一般的になってきた感のあるオークション(競売)で我々が参加(入札)する際にはどのように行動すべきかを検討する。更に、もう一つの代表的なオークション形式である競争入札についても、その問題点である談合との関係も含めて議論する。
達成目標/Course objectives
 我々が目にする多くの経済事象は、しばしば不完全競争的な特徴を有している。世界に誇る日本の代表的な企業であるトヨタをはじめ多くの大企業はこのような不完全競争市場を活躍の場としていると考えて、まず間違いない。そのため、これらの企業の行動を理解するには、不完全競争市場の理解が不可欠であり、それにはそこでの行動を特徴づける戦略的行動-少人数の経済主体間で行われる、自己の行動がいかに他者の行動に影響を与えるかを読み合いながらの行動-の理解が重要となる。このような戦略的行動の理解・分析の基礎を与えるものが、本講義で取り上げるゲーム理論である。本講義では、ゲーム理論を基礎から丁寧に解説する。各受講者が、ゲーム理論で取り上げる代表的なゲームの理解を通じて、現実経済のより良い理解が可能になる論理的思考力を身につけられるようになることを授業の到達目標とする。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
・ 「社会科学のための数学入門Ⅰ・Ⅱ」を履修済みであることが望ましい(ただし、微分と統計学の基本的な知識があれば履修に支障はない)。なお、本講義は前期の「ゲーム理論Ⅰ」とは異なり、2次関数の微分ができないとテスト問題を解答する際に支障が生じるので、この点を納得した上で受講して欲しい
・ 「ゲーム理論Ⅰ」を履修済みか、それと同等レベルのゲーム理論の知識を有すること。(「ゲーム理論Ⅰ」の未履修者は、これまでほぼ100%本授業では不合格になっている。)
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 【オンライン授業(オンデマンド型)】
第1回 オリエンテーション(評価方法・授業の進め方・必要な数学レベル等の確認)と前期テストの解説
2
授業計画/Class 第2回 テキスト5.2「情報集合と情報構造」(その1);ゲーム理論の議論における情報の扱い方についての基礎を学ぶ。
3
授業計画/Class 第3回 テキスト5.2「情報集合と情報構造」(その2);情報が不完全な状況下での経済分析の基本である期待値での議論を取り上げる。
4
授業計画/Class 第4回 テキスト5.3「ベイズ完全均衡」(その1);不完全な情報下でのゲームにおけるバックワード・インダクションの解、サブゲーム完全均衡、ナッシュ均衡の適応可能性について述べる。
5
授業計画/Class 第5回 テキスト5.3「ベイズ完全均衡」(その2);不完全な情報下でのゲームの均衡概念であるベイズ完全均衡について学ぶ。
6
授業計画/Class 第6回 テキスト5.4「シグナリング・ゲーム」(その1);企業が労働者の能力を把握できない場合に資格の有無で能力の把握を試みようという「能力給」型賃金体系の成否を扱う「シグナリング・ゲーム」について紹介する。
7
授業計画/Class 第7回 テキスト5.4「シグナリング・ゲーム」(その2);「シグナリング・ゲーム」における分離型均衡の導出を行う。
8
授業計画/Class 第8回 テキスト5.4「シグナリング・ゲーム」(その3);「シグナリング・ゲーム」における混在型均衡の導出を行う。
9
授業計画/Class 第9回 テキスト5.5「資格による能力判別の是非」; 上で議論した賃金体系の問題点とその改善策について論じる。
10
授業計画/Class 第10回 ここまでの理解を確認するための中間試験を実施。
11
授業計画/Class 第11回 中間試験の解説とテキスト6.2.1「完全情報の場合」;最初に前回行った中間試験の解説を行い、その後、完全情報下での取引について学ぶ。
12
授業計画/Class 第12回 テキスト6.2.2「競売」;不完全情報下での競売について学ぶ。
13
授業計画/Class 第13回 テキスト6.2.4「競争入札」;不完全情報下での競争入札について学ぶ。
14
授業計画/Class 第14回 テキスト6.3「オークションの比較」;競売と競争入札との比較を行う。
15
授業計画/Class 期末試験を実施する。
 
事前学習/Preparation ①当日やるテキストの関連部分を読んでおくこと。
事後学習/Reviewing ①その日にやったテキストの関連部分等の見直しをしておくこと。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notes本授業は対面授業(通常型)で行う。その際、極力学生に質問を投げかけ、双方向授業となるよう心掛ける。そのため、受講者には事前学習でのテキストの精読を求める。また、授業進度に合わせ、テキストや参考図書の練習問題を取り上げ、学生間でのディスカッションの機会をできる限り多く提供する。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 100% テキスト・ノート等の持ち込み不可の中間試験と期末試験により評価する。
中間試験:30% 期末試験:70%
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
価格
Price
1 梶井厚志・松井彰彦 ミクロ経済学 戦略的アプローチ 日本評論社 2000年 ¥2,530
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
価格
Price
 
1 澤木久之 シグナリングのゲーム理論 勁草書房 2014年 ¥3,300
メッセージ/Message
・ 履修を希望する者は、「ゲーム理論Ⅰ」を履修済みか、それと同等レベルのゲーム理論の知識を有すること。(「ゲーム理論Ⅰ」の未履修者は、これまでほぼ100%本授業では不合格になっている。)(再掲)
・ 成績評価方法や授業の進め方についての確認・注意を行うので、履修希望者は必ず初回の講義に参加すること。
・ 講義中の私語や携帯メールのチック等は厳禁とする。
・ 「社会科学のための数学入門Ⅰ・Ⅱ」を履修済みであることが望ましい(ただし、微分と統計学の基本的な知識があれば履修に支障はない)。なお、本講義は前期の「ゲーム理論Ⅰ」とは異なり、2次関数の微分ができないとテスト問題を解答する際に支障が生じるので、この点を納得した上で受講して欲しい。(再掲)
その他/Others
就職活動等のやむをえない事情によって試験を受けられない学生には、代替措置としての小レポート等を課すので、事前に必ず申し出ること。(大学としての取り決めがある場合は、そちらを優先。)
キーワード/Keywords
ゲーム理論         不完全情報