講義概要/Course description
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この授業の目的は、現代の国際政治学に必要とされる定量的分析法の基礎を習得することである。政治学・国際関係論を含む現代の社会科学の研究では、経験的データを用いた実証分析が広く用いられており、近年における国際政治の理論分野でも実証的なエビデンス(科学的証拠)に基づく研究が主流になっている。経済理論なしにマクロ経済政策を決められないのと同様、根拠のある政策提言をしようとすれば政治現象の原因や結果に関する体系的な理解が必要である。ただし、それは印象論ではなくしかるべき手法を用いて積み重ねられた証拠に基づいていなければならない。
近い将来、実証研究を積み重ねて構築した理論的知見に基づく「工学的」アプローチをもって、平和の増進や紛争解決、国際協力、効果的な外交政策などよりよい世界の実現のために政治・社会に介入できるようになるであろう。そのために必要なのは、正しい方法による実証研究を通じた国際政治現象の理解である。たとえば「集団的自衛権を行使すべきか」という外交政策課題を考えるときには、同盟を双方向にすることによって望まない戦争に引きずり込まれるリスクがどの程度上がるか、また逆に、同盟関係の強化による抑止で紛争をどの程度回避する見込みがあるか、などについて実際のデータに基づく知見が必要になる。国連の平和維持活動 (PKO) をより効果的に行おうとするならば、部隊の規模や要員派遣国の構成といった条件によって紛争の再発率や暴力の低下がどのように左右されるかについての一般的な理解が求められるはずである。このような問題についての理論的考察には定量的データの分析による実証研究が必要であり、きちんと実証された理論なくして実効性のある政策提言はできない。
この授業は統計学などの事前知識を一切前提としない。全くの初心者が前後期(最低限でよければ前期だけ)を履修すれば、あとは最小限度の「上乗せ」だけで卒論研究で使える技術が身につくことを目標としている。統計ソフトウェアRを用いた実習も並行して行い、前後期を通して実践的な定量的分析法を習得して実際に各自の研究に応用できるようになることを目指す。「国際政治理論II」は「国際政治理論I」の履修を前提とする。
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達成目標/Course objectives
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国際政治学のための定量分析の基礎を学ぶ 科学的手法を用いて社会現象を理解する方法を学ぶ 実証研究をデザインし、実行する技術を学ぶ
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授業計画/Lecture plan
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1
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授業計画/Class |
国際政治学のための統計データ分析 |
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2
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3
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4
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授業計画/Class |
データを知る:記述統計と可視化 |
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5
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6
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授業計画/Class |
母集団について推測する:統計的推定 |
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7
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8
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授業計画/Class |
二変数の関係 1:平均の差の検定 |
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9
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授業計画/Class |
二変数の関係 2:クロス表とカイ二乗検定 |
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10
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11
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14
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15
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事前学習/Preparation |
教科書の指定部分を読む(詳細は授業中に指示) |
事後学習/Reviewing |
授業内容を復習する |
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授業方法/Method of instruction
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区分/Type of Class |
対面授業 / Classes in-person
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実施形態/Class Method |
通常型 / regular |
活用される授業方法/Teaching methods used |
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成績評価方法/Evaluation
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1 |
試験 Exam
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50%
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定期試験
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2 |
その他 Others
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50%
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受講生は学期を通じて3回、応用分析の課題を提出する。
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教科書/Textbooks
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| 著者名 Author | タイトル Title | 出版社 Publisher | 出版年 Published year | ISBN | 価格 Price |
1 |
浅野正彦・矢内勇生
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Rによる計量政治学
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オーム社
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2018
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9784274223136
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3,520円
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授業関連情報/Class-related information
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その他/Others
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出席に関する規定 受講者はすべての授業に出席しなければならない。ただし、健康上の問題がある場合などは無理をせず休むこと。遅刻は欠席とみなし、3回の欠席で不合格とする。
不適切な言動と剽窃 すべての受講者は、他の参加者に対して敬意を払い、自由かつ建設的な知的空間の創出に貢献する義務を負う。特定の人種、民族、国、性別、宗教などに対して攻撃的な言動をしたり、大学における行動規範を遵守しない受講者にはペナルティを課す。いかなる形であれ剽窃や学術的に不誠実な行いをした受講者は、その時点で自動的に不合格とする。
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