講義内容詳細:比較政治論Ⅰ

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 比較政治論Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Comparative Politics Ⅰ
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 田中(坂部) 有佳子
英文氏名/Instructor (English) TANAKA(SAKABE) Yukako

講義概要/Course description
テーマ:国家、政治体制、政治変動
世界各国を見回すと、約半数の国家は民主制(民主主義)、そのほかは非民主制(権威主義)とみなされている。また、この2つの政治体制の間を行き来する国(例えばミャンマー)、民主化を進める国々も多くあるが、一方で近年、民主主義の後退(例えばアメリカ)も叫ばれ、民主主義の安定が危ぶまれる声もある。どちらの政治体制も継続しており、このことは、まず各体制の仕組みを理解する必要があることを物語っている。民主制を維持している国でも、その質の模索が続き、デジタル化も相まって市民参加型の政策形成もみられるようになった。暴力がない、安定した国家運営とは何か、より望ましい政治の仕組みとは何か、が探求され続けている。
本講義では、このような課題を考える土台となる、国家、政治体制の特徴と、体制変換、政治変動のトピックを取り上げる。比較政治論(学)が網羅する政治現象の一部としてこれらのトピックを扱い、講義中は理論の紹介とともに、主に東南アジア各国の経験や事例を検討する。本講義は分析対象の国や地域を限定していないので、各受講者は期末課題の機会を捉え、自分の関心のある国の政治現象を分析することを歓迎したい。
第2-8週では、まず何らかの政治体制をもつ「国家」に着眼し、国家の形成をもたらす要因を確認する。次に政治体制を類型化し、民主制と権威主義体制の特徴を捉える。非民主制から民主制への体制変動(民主化)と、また近年増加傾向にある、民主主義の後退がなぜ起こるのかについて検討する。また、多くの国で非民主制(権威主義体制)がなぜ持続するのかを分析した研究を理解する。第9週では、それぞれの政治体制のもとで活動する政党と選挙の役割・特徴は何かを議論する。その後、民主主義諸国が検討する質の向上について、法の支配、政府のアカウンタビリティ、汚職対策を概観する。第10週以降は、政治体制を脅かす政治変動として、国内アクター間における暴力を伴う対立がなぜ起こるのかを探る。そうした対立を検討するにあたり、民族というアクターに焦点をあて、なぜある時には政治行動を起こし、ある時には暴力を用いるのかを検討する。最後に、講義で検討してきた概念・理論を用い、各受講者が政治現象の事例を分析する。その概念や理論の妥当性も含めて分析結果を発表し合うことで、理解を深めていこう。
達成目標/Course objectives
―各国の体制変動や政治変動を分析するための基礎的な概念と理論を理解する。
―理論を踏まえて実際の事例を分析することにより、各国の政治事象を体系的に議論する。
―それぞれの政治現象が発生するのはなぜかという問題に対し、自ら分析する方法を身につける。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class イントロダクション:本講義の射程
事前学習/Preparation このシラバスを読み、講義の内容を理解する。
事後学習/Reviewing 期末課題で扱いたい事例を検討し始める。
2
授業計画/Class 近代国家の形成
事前学習/Preparation 粕谷第1章、久保他第2章を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
3
授業計画/Class 植民地支配とナショナリズム
事前学習/Preparation 粕谷第3章を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
4
授業計画/Class 政治体制の特徴と変動:民主制と非民主制、民主化と民主主義の後退

事前学習/Preparation 粕谷第5章1,2節;久保他第5章1,2節を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
5
授業計画/Class 民主化(1):経済成長との関係・階級構造
事前学習/Preparation 粕谷第6章(pp.105-112)、久保他第3章を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
6
授業計画/Class 民主化(2):改革派と市民社会の視点
事前学習/Preparation 粕谷第6章(pp.112-115)および配布資料を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
7
授業計画/Class 民主化(3):所得分配、国際的要因
事前学習/Preparation 粕谷第6章(pp.105-121);久保他第3章を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
8
授業計画/Class 権威主義体制の持続
事前学習/Preparation 粕谷第8章;久保他第5章を通読する。参考図書フランツ2018(上谷他訳)も参照。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
9
授業計画/Class 選挙・政党・投票行動
事前学習/Preparation 配布された資料を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートの復習
10
授業計画/Class 民主主義の質
事前学習/Preparation 久保他第12章を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
11
授業計画/Class 民族アイデンティティと政治
事前学習/Preparation 久保他第11章を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
12
授業計画/Class 国内紛争(内戦
事前学習/Preparation 粕谷第4章;久保他第6章を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
13
授業計画/Class 軍と暴力(クーデタ)、テロリズム、革命
事前学習/Preparation 久保他第9章を通読する。
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
14
授業計画/Class 事例への適用
事前学習/Preparation 事例分析の発表の準備
事後学習/Reviewing レジュメ・ノートによる復習
15
授業計画/Class 事例への適用・総括
事前学習/Preparation 事例分析の発表の準備
講義全体にかかわる質問事項を準備

事後学習/Reviewing 期末課題のペーパーを完成させ、提出する
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method ハイブリッド型ブレンド形式 / hybrid blend
補足事項/Supplementary notes本科目は講義後、適宜質疑応答の時間をとるとともに、クラス全体で、あるいは小グループに分かれてディスカッションを実施するセッションを随時設ける。したがって、受講者には、講義内での貢献が求められる。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 その他 Others 30% ショートペーパー(1000字以内、数回)
2 レポート Report 50% 期末課題(発表とペーパー提出)
3 平常点 In-class Points 20% 授業・ディスカッションへの貢献度
課題(試験やレポート等)に対するフィードバックの方法/Feedback methods for assignments (exams, reports, etc.)
数回課されるショートペーパーや期末課題の提出はコースパワーで行うので、教員のフィードバックは個別にコースパワーで得られる。また、授業内で確認も行う。
事例への適用の発表の際には、発表後にクラスメート・教員からのフィードバックを得る。

教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
1 粕谷祐子著 比較政治学 ミネルヴァ書房 2014.9 9784623071449 2800円+税
2 久保慶一, 末近浩太, 高橋百合子著 比較政治学の考え方 有斐閣 2016.3 9784641150317 2000円+税
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 エリカ・フランツ著 ; 上谷直克, 今井宏平, 中井遼訳 権威主義 白水社 2021.2 9784560098219 2500円+税 蔵書情報 / Library information
メッセージ/Message
この講義は、特定の国・地域にかかわらず、このテーマに関心のある方を歓迎いたします。
 
オフィスアワー:水曜、12:30-13:20この時間以外にも、アポイントメントにより随時歓迎いたします。
その他/Others
受講者人数により、授業計画の変更を行います。
キーワード/Keywords
比較政治学     民主主義     民主制     権威主義体制     民主化     政治変動     国家     民族     ナショナリズム