講義内容詳細:国際政治理論Ⅱ

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 国際政治理論Ⅱ
英文科目名/Course Title (English) Theory of International Politics Ⅱ
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 大石 晃史
英文氏名/Instructor (English) OISHI Koji

講義概要/Course description
この授業の目的は、現代の国際政治学に必要とされる定量的分析法の基礎を習得することである。政治学・国際関係論を含む現代の社会科学の研究では、経験的データを用いた実証分析が広く用いられており、近年における国際政治の理論分野でも実証的なエビデンス(科学的証拠)に基づく研究が主流になっている。経済理論なしにマクロ経済政策を決められないのと同様、根拠のある政策提言をしようとすれば政治現象の原因や結果に関する体系的な理解が必要である。ただし、それは印象論ではなくしかるべき手法を用いて積み重ねられた証拠に基づいていなければならない。

近い将来、実証研究を積み重ねて構築した理論的知見に基づく「工学的」アプローチをもって、平和の増進や紛争解決、国際協力、効果的な外交政策などよりよい世界の実現のために政治・社会に介入できるようになるであろう。そのために必要なのは、正しい方法による実証研究を通じた国際政治現象の理解である。たとえば「集団的自衛権を行使すべきか」という外交政策課題を考えるときには、同盟を双方向にすることによって望まない戦争に引きずり込まれるリスクがどの程度上がるか、また逆に、同盟関係の強化による抑止で紛争をどの程度回避する見込みがあるか、などについて実際のデータに基づく知見が必要になる。国連の平和維持活動 (PKO) をより効果的に行おうとするならば、部隊の規模や要員派遣国の構成といった条件によって紛争の再発率や暴力の低下がどのように左右されるかについての一般的な理解が求められるはずである。このような問題についての理論的考察には定量的データの分析による実証研究が必要であり、きちんと実証された理論なくして実効性のある政策提言はできない。

この授業は統計学などの事前知識を一切前提としない。全くの初心者が前後期(最低限でよければ前期だけ)を履修すれば、あとは最小限度の「上乗せ」だけで卒論研究で使える技術が身につくことを目標としている。前期の「国際政治理論I」では定量的手法の基礎を学び、定量的分析法を用いた研究が理解できるように学習する。後期の「国際政治理論II」では実際に計量分析が行えるようになるために実践的な内容を学ぶ。統計ソフトウェアRを用いた実習も並行して行い、前後期を通して実践的な定量的分析法を習得して実際に各自の研究に応用できるようになることを目指す。「国際政治理論II」だけの履修は推奨しないが、可能である(ただし特別な対応はできない)。
達成目標/Course objectives
国際政治学のための定量分析の基礎を学ぶ
科学的手法を用いて社会現象を理解する方法を学ぶ
実証研究をデザインし、実行する技術を学ぶ
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
国際政治理論I
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 序論:計量政治分析の目的と方法
事前学習/Preparation シラバスを読む
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
2
授業計画/Class 理論と実証研究デザイン
事前学習/Preparation TBA
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
3
授業計画/Class Rによるデータの成型
事前学習/Preparation TBA
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
4
授業計画/Class Rによるデータの記述と探索
事前学習/Preparation TBA
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
5
授業計画/Class 回帰分析
事前学習/Preparation 浅野・矢内 第10~11章
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
6
授業計画/Class 変数の変形とダミー変数
事前学習/Preparation 浅野・矢内 第13章
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
7
授業計画/Class 交互作用
事前学習/Preparation 浅野・矢内 第14章
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
8
授業計画/Class パネルデータ
事前学習/Preparation TBA
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
9
授業計画/Class ロジスティック回帰分析の基礎
事前学習/Preparation 浅野・矢内 第15章15.1
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
10
授業計画/Class ロジスティック回帰モデルの解釈
事前学習/Preparation 浅野・矢内 第15章15.2
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
11
授業計画/Class ロジスティック回帰での交互作用と時間依存性
事前学習/Preparation TBA
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
12
授業計画/Class 分析結果のまとめ方
事前学習/Preparation TBA
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
13
授業計画/Class 研究発表会 1日目
事前学習/Preparation 研究発表の準備をする
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
14
授業計画/Class 研究発表会 2日目
事前学習/Preparation 研究発表の準備をする
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
15
授業計画/Class 結論:国際関係研究における計量分析
事前学習/Preparation これまでの復習
事後学習/Reviewing 授業内容の復習をする
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 50% 受講者は学期を通じて実証分析プロジェクトを行い、学期末にペーパーを提出する。各段階の提出物の期限は特に指定がない限り締切日の日付変更まで(23時59分まで)である。

分析ペーパーは科学的かつ実証的でなければならない。これは、明確に設定された研究上の疑問に、統計データの分析による実証研究を行って答えるという意味である。各受講者は第4回の週までに担当者と研究のアイデアを話し合い、トピックについて承認を受けること。研究課題(リサーチクエスチョン)は、「〜すべきか」といった政治的・規範的主張や、「国際システムは本質的にアナーキーか」といった実証的に検証不可能な疑問ではなく、「民主主義はどのように経済発展に影響するか」「経済的相互依存が深まれば国家間の紛争は減るか」など、定量的なデータ分析によって答えようのあるものを選ぶこと。

研究課題を設定したあと、詳細な研究デザインと初期データを提出する。研究デザインは (1) 研究上の疑問、 (2) 仮説とその理由、および (3) 変数(群)、データ元、分析手法、(4) 研究の意義と貢献を明確にしたものであり、参考文献リストなどすべて含めてA4紙3〜5枚ほどの長さが普通である。

最終的な分析ペーパーでは (1) (担当者からのコメントに基づいて修正済みの)研究デザイン、(2) データの記述、(3) 分析結果、(4) 実証研究がどのように研究課題に答えたか(あるいは答えなかったか)を詳細に論じる。長さはおよそ10〜15枚程度。受講者は研究発表会でプレゼンテーションを行う。
2 その他 Others 50% 受講生は学期を通じて3回、応用分析の課題を提出する。
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
1 浅野正彦, 矢内勇生共著 Rによる計量政治学 オーム社 2018.12 9784274223136 3200円(税別)
その他/Others
出席に関する規定
受講者はすべての授業に出席しなければならない。出席は毎授業の最初に取り、その時点でいない受講者は欠席と記録する(つまり、遅刻は欠席扱いとする)。疾病や重大な個人的事情、または大学行事による公休の場合のみ正当な欠席と認める。そのような場合、受講者は欠席理由を証明できるものを提出すること。公共交通機関の遅れによる遅刻は、おおむね15分を超える大幅な遅延に限り正当な遅刻理由と認める。正当な理由のない欠席は2回まで認めるが、3回以上の欠席で自動的に不合格(XX)とする。(2回までの欠席であっても参加点には影響することに留意)。出席に関して配慮を要する特別の事情がある場合は、事前に担当者と相談すること。

不適切な言動と剽窃

すべての受講者は、他の参加者に対して敬意を払い、自由かつ建設的な知的空間の創出に貢献する義務を負う。特定の人種、民族、国、性別、宗教などに対して攻撃的な言動をしたり、大学における行動規範を遵守しない受講者にはペナルティを課す。いかなる形であれ剽窃や学術的に不誠実な行いをした受講者は、その時点で自動的に不合格とする。

電子機器の使用

授業はPC教室で行われるが、担当者の指示によらない電子機器(備え付けPC、携帯電話、タブレットなど)の使用を固く禁ずる。私物の電子機器の電源は教室に入る前に切っておくこと。無許可の電子機器使用は「欠席」扱いとすることがある。