講義内容詳細:国文学B/国文学

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 国文学B/国文学
英文科目名/Course Title (English) Japanese Literature B/Japanese Literature
学期/Semester 後期/通年 単位/Credits 2/4
教員名/Instructor (Japanese) 辻 吉祥
英文氏名/Instructor (English) TSUJI Yoshihiro

講義概要/Course description
小説とルポルタージュと文学の理論についての講義。
 「貧困/資本」「戦争」をテーマとしたルポルタージュや小説、既存の文学史の相対化、古典の変成、について主に取り上げる。前半は、ルポルタージュ、戦争(論)文学がはたす意義について考察する。既成の文学観は再考に付されるだろう。後半は近年の文学研究に重要なテーマについて、とくに欧米の批評理論を前提とした読解を試みる。原書による理解を基盤としているので、日本文学研究によくある入門的翻訳書がつくった従来の説明とは大きく異なるかもしれない。全体としては「ヒューマニティー」を未知の思考空間に解き放ち・思考する、歴史的な異化システムとして文学を見つめ直せるようにしてゆく。
達成目標/Course objectives
ルポルタージュや小説についての精確で深い理解はもちろんのこと、その枠組み、読解自体を検討に付すことのできるメタレベルの理論、思想を身につける。またそれに伴って旧弊で有害な文学観を棄却し、歴史的な異化の仕組みとしての物語性を理解、分析、協同的な教授ができるようにする。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 導入――授業案内 (9/21オンライン授業(オンデマンド型)での実施)
導入として、関連文献、問題意識の所在について説明する。
2
授業計画/Class 導入――文献案内
導入として、文学という領域におけるルポルタージュの意義、関連文献、問題意識の所在について説明する。
3
授業計画/Class ルポルタージュ1――鎌田慧『自動車絶望工場――ある季節工の手記』
ルポルタージュの現代的古典である鎌田慧の工場ルポについてその歴史的意義を学ぶ。
4
授業計画/Class ルポルタージュ2――石牟礼道子『苦海浄土――わが水俣病』
石牟礼道子の水俣病ルポルタージュの歴史的意義、聞き書きとされるその構成について検討する。
5
授業計画/Class 戦争の文学をどう捉え、教えるか1――武田泰淳『ひかりごけ』・大岡昇平『野火』      
『ひかりごけ』・『野火』が提起する問題の前提的理解のために、原一男の映画なども交え、考察する。
6
授業計画/Class 戦争の文学をどう捉え、教えるか2――武田泰淳『ひかりごけ』
『ひかりごけ』が提起する問題の前提的理解のために、熊井啓の映画なども交え、考察する。
7
授業計画/Class 戦争の文学をどう捉え、教えるか3――武田泰淳『ひかりごけ』
アジア太平洋戦争中の食糧と人間性の問題を扱った小説について検討する。
8
授業計画/Class 戦争の文学をどう捉え、教えるか4――大岡昇平『野火』、あるいは文学の発生について。
アジア太平洋戦争中のフィリピンでの食糧と人間性の問題を扱った小説について検討する。
9
授業計画/Class ジェンダーもしくは人類の半数の視点1――平塚らいてう「元始、女性は太陽であった」について、多角的な視点から精読する。
あらかじめ崩壊した虚構、文学史。「新しい」女の世界史的系譜。ヴィジュアル資料の分析手法。同時代の新聞資料の扱い方。
10
授業計画/Class ジェンダーもしくは翳・死角の形成2――平塚らいてう「元始、女性は太陽であった」について、多角的な視野から精読する。
不可視の労働、家事労働の(非)表現。ユートピア小説と堺利彦。パースからジェンダーへ。
11
授業計画/Class ジェンダーもしくはその歴史的読解3――平塚らいてう「元始、女性は太陽であった」について、比較思想史的な視野から精読する。
V・ウルフ、M・フーコー、J・バトラーらの思想を理解の前提とする。歴史としての複数形、虚構性について。
12
授業計画/Class ジェンダーもしくは比喩の転位4――平塚らいてう「元始、女性は太陽であった」について、多角的な視野から精読する。
S・ド・ボーヴォワール、椎名林檎、〈動物〉論。
13
授業計画/Class 古典的物語のモルフォロギー――芥川龍之介と「桃太郎」
伝来の「御伽草子」とりわけ「桃太郎」をめぐる文学の思想の問題について、文学史的、歴史的、多メディア的に考察する。芥川龍之介、坪内逍遥、巌谷小波、プロパガンダの観点から。
14
授業計画/Class 批評の枠組み――ロラン・バルト、もしくは E・W・サイードの思想について。
15
授業計画/Class これまでに扱ったルポルタージュ・小説・批評理論について討議もしくは補論。
 
事前学習/Preparation 前回までに考察された思想的課題、諸文献について各自の取り組みが継続されること。(初回のみ)既存の旧弊な知識を廃棄し、新しい世界観を柔軟に受け入れるマインドが用意ができていること。
事後学習/Reviewing 授業内で提示された課題について、資料の渉猟をしつづけ、思想的に繰りつづけること。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method ハイブリッド型ブレンド形式 / hybrid blend
補足事項/Supplementary notes本講義は基本的に対面授業で実施し(一部の回にオンライン授業を取り入れ)ます。
一部オンライン授業(オンデマンド形式)の日程についてはコースパワーからの連絡に留意してください。

批評理論の回は受講者の理解に照準した授業の進捗により各回の内容に組み込むことがある。また毎回毎回の内容は相互に嵌入し、前回の結論を掘り崩しては考え直していくようなスタイルをとる。よってむろん段階的な積み上げレッスン方式とはならない。受講者にとって、寡黙な時間の持続が内的に飛躍する契機となるように心掛けたい。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 100% 毎回、授業時に提起された問題に対する考察レポートを課す。クライテリアは、講義内容を前提とし、きちんとした資料調査、社会的思考、理論的読解ができているか。文の巧拙をも含む。
課題(試験やレポート等)に対するフィードバックの方法/Feedback methods for assignments (exams, reports, etc.)
毎回大量の添削結果が提示され、それ自体が授業内での相互啓発の契機を構成する。
教科書/Textbooks
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1 ●授業資料はプリント(オンライン時はコースパワーに添付形式)で配布します。
その他/Others
一部オンライン授業実施にあたり、大学の提供する Course Power を使用します。