講義内容詳細:歴史と人間(個別科目)[オンライン][月曜日開講・時限不定]

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 歴史と人間(個別科目)[オンライン][月曜日開講・時限不定]
英文科目名/Course Title (English) History and Humankind (Independent Courses)[Online]
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 信澤 淳
英文氏名/Instructor (English) NOBUSAWA Makoto

講義概要/Course description
「人新世」の歴史学 地球と人類の未来のために
 
 この授業では、現在の世界的な感染症の流行を踏まえて、地球と人類の未来について、「人新世」という概念を用いて、歴史の視点から考えていくことを、Course Powerをフル活用し、前期を通じて【オンライン授業(オンデマンド型)】としておこないます。
 【月曜日開講・時限不定】の授業として設定されておりますが、毎回月曜日の午前8時までに教材を公開しますので、教科書と教材をもとに、金曜日の午後11時59分までに、出席登録・小テストへの回答・課題への対応をCourse Powerを利用しておこなうことに致します。

 さて、2022年正月の箱根駅伝で青学は、往路も復路も、そして総合でも優勝を飾ることができました。テレビなどに映し出される選手たちと沿道の姿は、新型コロナ感染症や豪雨災害に代表される困難な状況の中であっても諦めなければ何とかなるものだという希望を持っていいのだと教えられたように思えます。近年、日本に限らず世界各地で異常気象などによる自然災害が激増しているように思えます。また、現在、地球全体で猛威を振るっている新型コロナウィルス感染症をはじめとする感染症の流行もまた20世紀後半以降、激増しているように思えます。そして、これらのその原因となっているものが実は人間の様々な活動が、地球環境を変えてしまったことにあると主張されることも増えているように思えます。さらには、地球も人類も現在、存続の危機にある、地球も人類も絶滅に瀕していると、声高に叫ぶ人もいます。でも、それに対して、私たち一人一人ができることは具体的にあるのでしょうか。何もできないという思いを抱き、絶望の中で、今を楽しむことしかできないのでしょうか。

 これに対して、ここ20年のほど、地球と人類を存続させるためのキーワードと捉えられている概念があります。それが「Anthropocene(人新世,アントロポセン)」です。この言葉を、新海誠監督の映画『天気の子』や蓮沼執太フィルのアルバム『アントロポセン』などの映像作品や音楽作品を通じて、ご存じの方もいらっしゃるものと思います。
 これは、人類は地球に対して地質学上の痕跡を残すような存在となっていて、地球は「人間の時代」という意味の言葉で表すことを必要とする地質年代を迎えていることを起点とする概念です。ただ時代に名前を付けただけでなく、気候変動などの長期的な影響を引き起こしている現象が人類に由来するとの認識を持つと同時に、人類の叡智を集結することで打開策を見つけることができるとする概念です。危機の深刻さを認めた上で、まだ間に合うはずなので、できることを見つけよう、というポジティブな面を持つ概念です。
 そして、気候学・地質学・経済学・政治学・哲学・エコロジーなど様々な領域で「人新世(アントロポセン)」という言葉を足掛かりに危機からの打開策が検討され実行に移されてきました。しかし、地球全体を長期的に捉えた総合的な打開策というものは、なかなか見いだしづらいというのが、現状のように思えます。
 ところで、現在の危機を打開し、地球と人類の将来における存続を可能にするというと、現在を生きる私たちは、ひたすら艱難辛苦の日々を耐えて生きることに努めなければならないというイメージを抱きがちです。これに対して、現在を生きている私たちの幸福と、将来における地球と人類の存続を両立させるために「持続可能な開発(SDGs)」という考え方が提唱されています。それを実現するための様々な試みが現在、実行されつつあります。
 一方、マルクスの研究者である斎藤幸平氏は、教科書とした『人新世の「資本論」』で、「人新世」とマルクスの『資本論』を結びつけることを通じて、現在の資本主義社会やSDGsを批判すると共に、新しい社会像を提案されています。
 これに対して、気候変動により地球と人類が滅亡に瀕しているわけではなく、資本主義の下で、人類が豊かで幸福に生きることは、これからも可能であると主張する人々もいます。
 地球と人類の現状と未来について、正反対の捉え方が存在するのは何を意味しているのでしょうか。この授業では、歴史の視点を通じて、考えることを試みることにしていきます。

 この授業では、斎藤氏の問題提起を手がかりに、「歴史」の視点から「人新世(アントロポセン)」を取り上げることを通じて、領域ごとの議論の交通整理をおこなうと共に、議論どうしを関連付けることを試みます。そして、「持続可能な開発」や「地球と人類のより良い未来」のために私たちにできることへの糸口を、「歴史」を学ぶことを通じて見出すことに、挑んでみます。
 なお、「歴史」を学ぶということは、人間とその社会の現在と未来について、過去の具体例を用いて、考えることであり、それを通じて、希望の灯を点すための手がかりを見つけることだと思います。
達成目標/Course objectives
1. 「Anthropocene(人新世)」という新しい概念を手がかりに複数の学問領域に跨がった議論の在り方を学ぶ。
2. 歴史を長期的に捉えることが現代の人間にとって何故必要なのかを理解する。
3. web検索やデータベース検索を通じて情報収集をおこなう方法を習得する。
4. 収集した複数の情報を比較検証し妥当性を判断する技能を習得する。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
後期科目のヨーロッパ史A(カリキュラムの関係で1年生は履修できないので、必修とはしませんが、この授業で紹介する議論を踏まえると理解が深まります。)
 なお、この授業は今年度より時限不定の【オンライン授業(オンデマンド型)】となり、90分ルールが適用されなくなりましたので、相模原キャンパス・青山キャンパスどちらのキャンパスの学生も学部・学年を問わず履修可能となりました。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 開講案内【オンライン授業(オンデマンド型)】
 「オンライン授業(オンデマンド型)」でのこの授業の進め方、Course Power のこの授業での用い方、授業担当者の紹介、評価方法、教科書などについてのガイダンスをおこないます。
 また、この授業で扱う「人新世」という概念についての基本的な説明をおこなうと共に、斎藤氏の本を教科書とする理由と、斎藤氏の本での主張からどのように議論を広げていこうとしているのかを説明します。
 なお、初回授業時にはシステムエラーなどにより、Course Powerにアクセスできないことが頻繁におこるなどのトラブルがおこる可能性が高いため、出席登録と小テストは初回授業についてはおこなわないこととします。
事前学習/Preparation シラバスを読み、講義概容・達成目標・授業計画・教科書などについて確認しておくこと。
事後学習/Reviewing 「歴史と人間」という科目で、Anthropocene(人新世)を取り上げることには、どのような意味があるのか、今回の授業内容をもとに考えておきましょう。
2
授業計画/Class 歴史を通して考える【オンライン授業(オンデマンド型)】
 教科書での斎藤氏の問題提起を踏まえて、「歴史」を通じて考えることの意義をめぐるアーミテイジらの近年の議論を紹介することにより、「人新世(アントロポセン)」を「歴史と人間」の授業で扱うことの必要性を明らかにしていきたいと思います。
 また、斎藤氏が拠り所とされているマルクスの『資本論』が19世紀後半のイギリスのロンドンで、ドイツ語で書かれたことの意味についても考えてみます。
事前学習/Preparation ①教科書の「はしがき」を読んでおいてください。
②SDGs(持続可能な開発目標)とは何か、調べておいてください。
③マルクスがイギリスの首都ロンドンでどのように生活していたのか調べておいてください。
事後学習/Reviewing ①斎藤氏が「SDGsは大衆のアヘン」であるとされていますが、それが適切であるのかどうか、今回の授業をもとに考えてみましょう。
②日本の歴史学者たちが、「人新世(アントロポセン)」についての、どのような主張をしているのか、調べてみましょう。
3
授業計画/Class 人類の歴史での時代区分【オンライン授業(オンデマンド型)】
 「人新世(アントロポセン)」は、地球と人間の未来を考えるために考案された時代区分です。これまで、時代区分はどのようになされてきたのか、人文科学と自然科学では、時代区分の捉え方にどのような違いがあるのか、今回は、人類の歴史の側、人文科学サイドから考えてみることにします。
事前学習/Preparation 人類の歴史をどのような時代に区切ることが、歴史学では行われてきたのか、調べておいてください。
事後学習/Reviewing 「人新世(アントロポセン)」という時代区分は、人文科学サイドの時代区分にとって、どのような意味を持つのか、考えてみましょう。
4
授業計画/Class 自然の歴史での時代区分【オンライン授業(オンデマンド型)】
 「自然にも歴史がある」というのは、17世紀のヨーロッパで生まれた概念です。その概念がどのように生まれ、19世紀のヨーロッパで地質学や古生物学として確立し、ダーウィンの進化論と結びついていくのか、また地質年代というものがどのように設定されているのかを明らかにします。
事前学習/Preparation  「自然には歴史はない」とされてきたのは、なぜなのか、考えておいてください。
事後学習/Reviewing  イスラム世界では、自然の歴史はどのように捉えられてきたのか、調べてみましょう。
5
授業計画/Class 地球環境をめぐる諸問題のナラティヴ【オンライン授業(オンデマンド型)】
 20世紀半ばまでの公害をめぐる議論が20世紀後半に地球環境をめぐる議論に変化していったことが、「人新世」が議論されるようになった前提であるように思えます。夏目漱石や幸徳秋水から立松和平への足尾銅山鉱毒事件に関わるナラティヴの変化を明らかにした後、カゾーンの『沈黙の春』、石牟礼道子の『苦海浄土』、小松左京の『復活の日』で、地球環境に関してどのような問題提起をなされているのかを考えてみます。
事前学習/Preparation ①教科書の第1章を読んでおいてください。
②地球環境問題と社会問題が関連付けて考えられるようになったきっかけは何か、調べておいてください。
事後学習/Reviewing ①足尾銅山鉱毒事件での田中正造らの言説が「人新世」のナラティヴへと発展することがなかったのは、なぜか考えてみましょう。
②「人新世」という概念を用いることで、地球環境問題にどのような展望が開けることになるのか、考えてみましょう。
6
授業計画/Class Paul Crutzenの「人新世(アントロポセン)」【オンライン授業(オンデマンド型)】
 2000年にメキシコで開かれた学会で、ノーベル賞受賞化学者のPaul Crutzenが「もはや完新世ではない・・・人新世(アントロポセン)」である」と叫んだことが、「人新世(アントロポセン)」という言葉が普及するきっかけであったとされています。Paul Crutzenが「人新世(アントロポセン)」について説明した2つのエッセイをもとに、Paul Crutzenが訴えようとしていたことは何であったのか、考えてみることにします。
事前学習/Preparation Paul Crutzenは、どのような業績をあげたことで、ノーベル賞を受賞したのか調べておいてください。
事後学習/Reviewing Crutzenの業績と「人新世(アントロポセン)」は、どのように結びついているのか、考えてみましょう。
7
授業計画/Class Dipesh Chakrabartyの「人新世(アントロポセン)」【オンライン授業(オンデマンド型)】
 「人新世(アントロポセン)」をめぐる議論が自然科学や気候変動の領域から人文科学の領域も含めたものへと広がったのは、Dipesh Chakrabartyの2009年の論文「Climate of History」の影響が大きいとされています。マルクス主義の歴史家であるDipesh Chakrabartyが気候変動に関心を寄せるようになったいきさつとその意味を考えてみることにします。
事前学習/Preparation ①教科書の第2章を読んでおいてください。
②Chakrabartyとはどのような研究をおこなっている歴史学者であったのか、調べておいてください。
事後学習/Reviewing  斎藤氏がChakrabartyの議論に言及されていないのはなぜか、考えてみましょう。
8
授業計画/Class 「人新世」なのか「資本新世」なのか【オンライン授業(オンデマンド型)】
 Chakrabartyの問題提起は、地球と人類が直面している危機は資本主義社会が原因なのであるから「人新世」とよぶよりも「資本新世」とよぶ方が適切なのではないかという問いかけを生み出しています。
 ここでは、Chakrabartyの論文「気候と資本」での議論を踏まえて、19世紀のオーウェン・マルクス・モリスらによる資本主義批判、20世紀のブローデル・ウオーラステインらの資本主義批判、そして、教科書での斎藤氏の資本主義批判をもとに、その妥当性を考えてみます。
事前学習/Preparation ①教科書の第3章を読んでおいてください。
②Chakrabartyの論文「気候と資本」の日本語訳を探して読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 授業をもとに「人新世」と「資本新世」のどちらが適切なのか考えてみましょう。
9
授業計画/Class 「人新世」の始まりはいつ?【オンライン授業(オンデマンド型)】
 「人新世」という地質年代は、いつから始まるのか、15世紀末の「コロンブス交換」から、18世紀後半からの産業革命から、20世紀後半の「大加速の時代」から、とする3つの有力とされてきた学説とその根拠について整理した上で、国際地質学会連合が20世紀後半からと決定した理由を考えてみます。
事前学習/Preparation ①教科書の第4章を読んでおいてください。
②Crutzenが、「人新世」を提案した時はいつからと考えていたのか調べておいてください。
事後学習/Reviewing 「人新世」の始まりを1万年前からとする学説もあるのですが、それが不適切とされた理由も考えてみましょう。
10
授業計画/Class 地球の危機と人類【オンライン授業(オンデマンド型)】
 20世紀後半から地球と人類がどのような危機に直面していると認識されるようになり、どのような主張や行動が行われてきたのかを、ガイア仮説・「成長の限界」・第六の絶滅などについての議論と地球温暖化をめぐる国際政治を手がかりに考えてみることにします。また、それがハラウェイら哲学者たちの議論を通じて、どのように「人新世」をめぐる議論に接続されていくのかも整理してみます。
事前学習/Preparation ①教科書の第5章を読んでおいてください。
②20世紀後半に進歩主義が否定的に捉えられるようになった理由を調べておいてください。
事後学習/Reviewing 開発途上国の貧しい人々を困らせない形での脱成長を可能にする方法を考えてみましょう。
11
授業計画/Class 「人新世」とSDGs【オンライン授業(オンデマンド型)】
 地球と人類が直面している危機に対する打開策の決定打として2015年の国連総会で採択された「アジェンダ2030」に含まれている「SDGs(持続可能な開発目標)」とは何で、具体的にどのようなことが行われているのかを整理していきます。そして、教科書での斎藤氏のSDGs批判が適切なのかどうかも考えてみます。
 なお、就職後、SDGsに関する企画を出すことを上司から求められることも視野に入れて、この回では考えてみることにします。
事前学習/Preparation ①教科書の第6章を読んでおいてください。
②日本政府がSDGsのために具体的に何をおこなっているのか、調べておいてください。
事後学習/Reviewing SDGsを実現するにために個人でできることを、斎藤氏の批判を踏まえた上で、考えてみましょう。
12
授業計画/Class 「人新世」の政治【オンライン授業(オンデマンド型)】
 「人新世」という認識の登場が、各国政府や国際機関の政策、あるいは国境を超えた市民運動にどのような影響を与えているのか、また影響を与えていないとすればどのような事情があるのかを、教科書での斎藤氏の議論を手がかりに、検証していきます。
事前学習/Preparation ①教科書の第7章を読んでおいてください。
②地球環境問題を解決するために、これまでどのような国際協力が行われてきたのか、調べてみましょう。
事後学習/Reviewing 斎藤氏の政治に関する提案と、脱成長コミュニズムの間に矛盾はないか、考えてみてください。
13
授業計画/Class 「人新世(アントロポセン)」の芸術【オンライン授業(オンデマンド型)】
文学・音楽・映画などの芸術の領域で「人新世(アントロポセン)」は、どのように取り上げられていて、そこではどのようなメッセージが発信されているのかをみてゆきます。具体的には、新海誠監督の映画『天気の子』・蓮沼執太フィルのアルバム『アントロポセン』などを取り上げることにします。また、宮崎駿氏の映画/コミックの『風の谷のナウシカ』を、20世紀後半から「人新世」に突入していたことを象徴する作品として検討してみます。
事前学習/Preparation 新海誠監督には『天気の子』を「人新世」と関連付けたインタビューがあります。そのインタビューをWeb検索などを通じて見つけ、新海誠監督が「人新世」について、どのような説明をしているのか、調べておいてください。
事後学習/Reviewing 『風の谷のナウシカ』の映画版とコミック版の結末の違いの意味を考えてみましょう。
14
授業計画/Class 「人新世」と宗教【オンライン授業(オンデマンド型)】
 「人新世」という概念を踏まえて、現在の宗教の役割について、どのような議論や動きが起こっているのか、ローマ教皇フランシスコの『回勅ラウダート・シー』と比叡山延暦寺の試みなどをもとに考えてみることにします。
事前学習/Preparation ①教科書の第8章を読んでおいてください。
②比叡山延暦寺によって作成された動画を教材で指定しておきますので、授業までにみておいてください。
事後学習/Reviewing ①斎藤氏が教科書で宗教や『回勅ラウダート・シ』を取り上げていないのはなぜか、考えてみましょう。
②「人新世(アントロポセン)」という概念を宗教と関連付けることから、どのような積極的な展望を開くことができるのか、考えてみましょう。
15
授業計画/Class 「より良い未来」のために【オンライン授業(オンデマンド型)】
 これまでの授業内容を踏まえ、また皆さんから提出されたレポートで皆さんから寄せられた見解をもとに、地球と人類がともに持続可能となる「より良い未来」を実現するにはどうすればいいのかを、皆さんと考えてみることにします。また、斎藤氏の提案の妥当性についても、改めて、考えてみることにします。
事前学習/Preparation ①教科書の「おわりに」を読んでおいてください。
②これまでの授業内容を手がかりに、教科書での斎藤氏の主張は妥当なのかどうか考えておいてください。
事後学習/Reviewing 「人新世(アントロポセン)」を迎えた現在、地球と人類の「より良い未来」のために、実行できることは、何か、具体的に考えてみてください。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class オンライン授業 / Online
実施形態/Class Method オンデマンド型 / on-demand
補足事項/Supplementary notes この講義は、【オンライン授業(オンデマンド型)】で実施します。
①毎週月曜日の午前8時までに【オンデマンド授業】の教材をCourse Powerを使って、配布します。また、毎週月曜日の午後8時までに【オンデマンド授業】での課題や掲示板、小テストの公開もCourse Powerを使って開始します。なお、Course Powerでの課題や小テストへの回答の締め切りは毎回毎週金曜日の午後11時59分とします。
②小テストの結果の発表は毎回土曜日の午前8時に、課題への回答を集約し評価をまとめたものは、次の回の授業の教材1の「はじめに」の部分で公開いたします。
③なお、【オンデマンド授業】での前期を通じての課題となるレポートについては、第1回授業の週の月曜日の午前8時までにCourse Powerの第1回授業の「レポート」の項目で提示します。なお、レポートの提出の締め切りは、第13回授業の週の金曜日の午後11時59分とします。Course Power上の第1回授業のレポートの項目にWORD文書で提出してください。提出されたレポートは、添削やコメントを加え評価をおこなった後、Course Powerを返却いたします。
④【オンデマンド授業】での配布される教材や提出されたレポートへの添削にはWORDを利用していますので、WORD文書の作成・閲覧が可能な環境を用意しておいてください。
 
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 50% 【オンライン授業(オンデマンド型)】の授業のため、定期試験は実施しません。
 定期試験の代わりに、Course Powerを使用して、各回の授業で実施する小テストの点数を集計したものに、システムエラーによりアクセスできなかった場合などを考慮した補正を加え、評価をおこないます。
2 レポート Report 30% 「人新世(アントロポセン)」に慣例すると考えることができる作品(文学作品・研究書・論文・音楽・美術・映像などのいずれも可)の中から1つを選び、選んだ理由・その文献の内容・その文献での著者の主張・それに対する意見または感想を、2000字程度のWORD文書にまとめ、13回目の授業の時までにCourse Power上で提出してください。なお、誤字・脱字・誤変換は減点の対象としますので、提出前の確認を怠らないようにしてください。なお、レポートを提出されない場合は、成績評価の対象外として扱いますので、ご注意ください。
3 平常点 In-class Points 20% Course Power上での質問や掲示板での課題への対応など、授業への貢献度に応じて評価します。
課題(試験やレポート等)に対するフィードバックの方法/Feedback methods for assignments (exams, reports, etc.)
①小テストへの回答は毎週金曜日の午後11時59分とし、翌土曜日の午前8時にCourse Powerを通じて結果をフィードバックします。
②レポートには添削と評価をおこなった後、Course Powerを利用して添削ファイルを順次、返却することにします。
③各回授業での課題に対する回答を集約し評価したものを、次の回の授業の教材1の「はじめに」の部分で公開し、フィードバックすることにいたします。
④Course   Powerの質問機能を利用して質問に対しては、1週間以内を目安に個別に順次、お答えすることにいたします。
教科書/Textbooks
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1 斎藤幸平 人新世の「資本論」 集英社新書 2020.9 9784087211351 1122円(税込み) Anthropocene(人新世)とマルクスの『資本論』を結びつけ、現在の世界的な感染症の流行を踏まえた、現代の資本主義社会に対して刺激的な問題提起が行われている本であり、「人新世」という概念を導入する意義を考える上でもっとも有益な本なので、教科書とします。
参考書/Reference books
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1 D.ハラウエイ[ほか]著 「特集 人新世;地質年代が示す人類と地球の未来」『現代思想』第45巻第22号 青土社 2017.12 9784791713561 1400円+税 「人新世」をめぐるさまざまな視点からの論考をまとめた特集号。
2 塩田弘 [ほか] 編 エコクリティシズムの波を超えて 音羽書房鶴見書店 2017.5 9784755304019 3800円+税 「人新世」という概念からの登場を受けて、文芸批評の領域ではどうすればいいのかという問題意識に基づく論文集。 蔵書情報 / Library information
3 篠原雅武著 人新世の哲学 人文書院 2018.1 9784409030967 2300円+税 「人新世」という概念の登場が人間の思想に何をもたらすのかについての哲学の視点からの考察。 蔵書情報 / Library information
4 ガイア・ヴァンス著;小坂恵理訳 人類が変えた地球;新時代アントロポセンに生きる 化学同人 2015.7 9784759815986 3888円(税込み) 「人新世」の到来により地球に何が起こっているのか、世界各地を訪ね明らかにしたルポルタージュ
5 クリストフ・ボヌイフ, J.B.ブレソズ著;野坂しおり訳 人新世とは何かー〈地球と人類の時代〉の思想史 青土社 2018.3 9784791770465 3456円(税込み) 「人新世」がどのように捉えられているのかについてのフランス語での概観を日本語に訳したもの。英訳もある。
6 ジョー・グルディ, D・アーミテイジ著 ; 平田雅博, 細川道久訳 これが歴史だ! 刀水書房 2017.9 9784887084292 2500円+税 長期的視野の復権と新しいテクノロジーの利用によって、公共の未来に資する歴史学を創り出すことをグルデイとアーミテイジは主張しているのですが、その中で「人新世」にも注目しています。歴史学にとっての「人新世」について考えるに当たっての有益な指摘がなされている一冊です。 蔵書情報 / Library information
7 ヴァイバー・クリガン=リード著;水谷淳[ほか]訳 サピエンス異変;新たな時代「人新世」の衝撃 飛鳥新社 2018.12 9784864106627 1950(税込み) 「人新世」という概念をめぐる議論がどこまで広がっているのかを象徴する一冊。
8 J.G.オッグ, G.M.オッグ, F.M.グラッドシュタイン著 ; 鈴木寿志訳 要説地質年代 京都大学学術出版会 2012.3 9784876985999 3400円+税 地質学での年代区分に関する概念や用語をカラーの図表を使って整理していて、この授業での議論の基礎。用語の適切な日本語表記を確定しようとする重要な試み。ただし、「人新世」は本書では簡単に言及されているだけです。 蔵書情報 / Library information
9 ミシュレ 著 ; 大野一道訳 藤原書店 1997.2 4894340607 3914円 『フランス革命史』で知られる19世紀を代表する歴史家による人間と地球環境の関わりを物語った博物誌四部作の一冊。『海』と共にフランスでの議論の大前提。 蔵書情報 / Library information
10 フェーヴル著 ; 飯塚浩二 [原訳] ; 田辺裕訳 大地と人類の進化 岩波書店 1971.7 4003345118 フランスのアナール学派の始祖による地球と人類の歴史についての長期的視野からの歴史。地理学者である飯塚氏による岩波文庫の二巻本。ある程度、定期的に復刊されることがある。 蔵書情報 / Library information
11 フェルナン・ブローデル 著 ; 浜名優美訳 環境の役割 藤原書店 1991.11 4938661373 8800円 20世紀後半の歴史研究に決定的な影響を与えたフランスの歴史家ブローデルの主著『フェリペ二世の時代の地中海の歴史』の第1巻。人間の歴史における自然環境の役割が「長期持続」という概念を通じて強調されている。 蔵書情報 / Library information
12 エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ 著 ; 稲垣文雄訳 気候の歴史 藤原書店 2000.6 4894341816 9240円 現代のアナール学派を代表する歴史家による「気候」の歴史。ミシュレ以来の問題意識がどのように継承されているのかがわかる。 蔵書情報 / Library information
13 ジョン・R・マクニール著 20世紀環境史 名古屋大学出版会 2011.9 9784815806774 5600円+税 20世紀の環境問題を歴史的概観した名著。日本語版序文では3.11にも言及されている。なお、著者は『世界史』のマクニールの息子で、20世紀後半から「人新世」に突入したとする論客の一人であるのだが、本書では「人新世」にはふれられていない。 蔵書情報 / Library information
14 デヴィッド・クリスチャン, シンシア・ストークス・ブラウン, クレイグ・ベンジャミン著 ; 石井克弥, 竹田純子, 中川泉訳 ビッグヒストリー 明石書店 2016.11 9784750344218 3700円+税 宇宙の誕生から「人新世」までのきわめて長い期間を対象とするスケールの大きな歴史。 蔵書情報 / Library information
15 ジャレド・ダイアモンド著 ; 楡井浩一訳 文明崩壊 草思社 2005.12 4794214642 2100円 ダイアモンドの3部作のうち、この授業での議論ともっとも関連深いもの。二巻本の草思社文庫版も出ている。 蔵書情報 / Library information
16 J.E.ラヴロック著 ; スワミ・プレム・プラブッダ訳 地球生命圏 工作舎 1984.10 4875020988 2400円 ガイア論の提唱者の著書の最初の日本語訳。ガイア論をめぐる議論の出発点。 蔵書情報 / Library information
17 荒俣宏著 大博物学時代 工作舎 1982.12 4875020902 3200円 ヨーロッパ諸国で地質学や古生物学をめぐる議論がどのようになされてきたのかを人物中心に紹介した一冊。博覧強記ということの意味について考えさせられる一冊。カバー以外には原色図版がないのは残念。 蔵書情報 / Library information
18 スティーヴン・J・グールド著 ; 渡辺政隆訳 時間の矢・時間の環 工作舎 1990.1 4875021623 2600円 進化学者・古生物学者・名エッセイストとして知られる著者による、地質学をめぐる古典の名著三冊を取り上げた研究。古典を読むということの意味を考えさせる一冊でもある。なお、「人新世」をめぐる議論が本格化する以前に著者は亡くなっている。 蔵書情報 / Library information
19 レイチェル・カーソン著 ; 青樹簗一訳 沈黙の春 新潮社 1974.2 4102074015 260円 環境問題をめぐる議論の原点とも言える名著の翻訳。文庫での再版が繰り返されており、研究文献も多い。 蔵書情報 / Library information
20 石牟礼道子著 苦海浄土 河出書房新社 2011.1 9784309709680 4100円+税 環境と人間をめぐる議論の日本語での原点の一つ、『苦海浄土』3部作を収めた一冊。『苦海浄土』は様々な形での出版が繰り返されている名著であり、解説を比較するのも興味深い。なお、池澤夏彦個人編集『世界文学全集』に選ばれた日本の作品は本書のみ。 蔵書情報 / Library information
21 大門正克著 語る歴史、聞く歴史 岩波書店 2017.12 9784004316930 860円+税 現在の歴史はいかにしたら語りうるのかという問題へのオーラルヒストリーの視点からの思索の書。 蔵書情報 / Library information
22 Dipesh Chakrabarty The Crises of Civilization; Exploring Global and Planetary Oxford University Press 2019.2 9780199486731 5904円 この授業での議論の根幹をなす論文が収録されている論文集で歴史や文明をめぐる議論と「人新世」をめぐる議論の橋渡しが試みられている。日本語訳はまだない。
23 J.Zalasiewics, C.N.Waters, M. Williams, C.Summerhayes編 The Anthropocene as a Geological TIme Unit Cambridge University Press 2019.1 9781108475235 7433円(税込み) Anthropoceneをめぐる議論を地質学の観点から再検討した論文集。
24 edited by Jason W. Moore Anthropocene or capitalocene? PM Press 2016.6 9781629631486 2603円(税込み) Anthropocene(人新世)とCapitalocene(資本新世)のどちらがより妥当な概念であるのかをめぐる論文集。 蔵書情報 / Library information
25 J.R.McNeill, P.Engelle著 The Great Acceleration; An Environmental History of the Anthropocene since 1945 Belknop Press 2016.4 9780674545038 2338円 世界は、20世紀後半から「大加速の時代」を迎え、「人新世」と呼ばれる段階に突入したのだとする観点から書かれた環境史。
26 Simon Lewis, Mark A.Maslin The Human Planet; How We Created the Anthropocene Penguin Books 2018.7 9780241280881 1386円(税込み) Pelican Intoroductionの一冊として出版された概説書。Ellisの主張の妥当性を検証する上で必要な一冊。
27 岸田一隆著 「青学発」岸田教授のエネルギー文明論 エネルギーフォーラム 2019.12 9784885555053 1500円+税 この授業で取り上げる課題に対する別のベクトルからの議論で、刺激的。 蔵書情報 / Library information
28 岡田昌彰 美しい英国の産業景観 創元社 2018.12 9784422701172 5500円+税 イギリスで始まった産業革命を担ってきた工場・橋・水道施設・鉱山などなどが、それぞれの役割を終えた後、それぞれの場所の景観の中で再生を遂げた姿を美しい写真で表現した一冊。
29 日経サイエンス編集部 別冊日経サイエンス、アントロポセン 人類の未来 日経サイエンス 2019.2 9784532512316 2000円+税 「アントロポセン(人新世)」という言葉を手がかりに、地球と人類の未来を巡る様々な課題をビジュアルに解き明かし、ポジティブな展望を開こうとする意欲的な一冊。
30 徳仁親王 水運史から世界の水へ NHK出版 2019.4 9784140817728 1600円+税 ご即位される直前に、皇太子時代になさった水の惑星としての地球とそこに生きる人々の歴史と現在をめぐるご講演を、一冊にまとめ、出版されたもの。「人新世」を生きることの意味を考える上でも示唆深い。
31 成田龍一・長谷川貴彦編 〈世界史〉をいかに語るかーグローバル時代の歴史像 岩波書店 2020.2 9784000613897 2900円+税 現在、世界史、あるいはグローバル・ヒストリーがどのように捉えられているのか、望ましい歴史像とはどのようなものであるのかについての最新の議論の姿を示す論文集。
32 石坂匡身・大串和紀・中道宏 人新世の地球環境と農業は 農文協 2020.3 9784540192128 1800円+税 地球環境問題を解決し、生物大絶滅の危機を回避するための鍵を握るのが、日本の農業であることを説いた一冊。地球環境問題にはどのようなものがあり、日本政府や国際社会がどのように取り組んできたのかについても明確に説明されている。
33 大村敬一・湖中真哉 「人新世」時代の文化人類学 放送大学教育振興会 2020.3 9784595331917 3300円+税 「人新世」という概念の登場が、文化人類学という学問において、どのような新たな展望を開いたのかを明解に示したもの。放送大学でのオンライン授業のための教科書。オンライン授業の在り方を考えるための参考書でもある。
34 石弘之 感染症の世界史 角川ソフィア文庫 2018.1 9784044003678 1080円+税 人類と感染症の闘いを果てしない「軍拡競争」に喩える著者による環境史の視点からの歴史的研究。人類が地球環境を著しく改変したことが、感染症をもたらすウィルスの変異を促し、20世紀後半以降、感染症の流行が激増しているも指摘されている。
35 Erle C.Ellis Anthropocene: A Very Short Introduction Oxford University Press 2018.5 9780198792987 1365円(税込) 「人新世」をめぐる、さまざまな領域での議論を整理した、現時点で、もっとも目配りの効いた解説書。日本語訳がないことが惜しまれる。
36 トマス・E・グレーデル、ポール・J・クルッツェン著;松野太郎監修 気候変動:21世紀の地球とその後 日経サイエンス社 1997.10 4532520630 3500円+税 「人新世」を提唱する以前にクルッツェンがグレーデルとの共著として著した気候変動の変化と地球環境についての概説書の日本語訳。
37 教皇フランシスコ著;瀬本正之・吉川まみ訳 回勅ラウダート・シー:ともにに暮らす家を大切に カトリック中央協議会 2016.8 9784877501990 1400円+税 ローマ教皇フランシスコが地球環境と人類が直面している危機に対する認識を示し、その克服を訴えた2015年の文書の日本語訳。ローマ教皇がSDGsと同様の現状認識に立っていたことがわかる。
38 エリザベス・コルバート著;鍛原多恵子訳 6度目の大絶滅 NHK出版 2015.3 9784140816707 2400円+税 人類が生物種の6度目の大絶滅を引き起こしつつあることを警告した書物。
39 蟹江憲史著 SDGs(持続可能な開発目標) 中央公論新社 2020.8 9784121026040 920円+税 SDGsの理念と内容についての基本を抑えた概説書。 蔵書情報 / Library information
40 南博, 稲場雅紀著 SDGs 岩波書店 2020.11 9784004318545 820円+税 SDGsが国連で採択されるまでの経緯と自治体やNPOでどのような取り組みがなされているかを、パンデミックに直面した危機の時代の羅針盤という観点からまとめた一冊。 蔵書情報 / Library information
41 村上芽, 渡辺珠子著 SDGs入門 日本経済新聞出版社 2019.6 9784532114084 900円+税 SDGsについての企画提出を、ビジネス現場で上司から急遽、命じられたら・・・という事態を想定した実践的な観点からの概説書。 蔵書情報 / Library information
42 柿埜真吾 自由と成長の経済学 PHP新書 2021.8 9784569850146 930円+税 斎藤氏の議論に対して資本主義と自由の有効性を主張し、反論を試みているのだが、足尾銅山鉱毒事件以来の環境被害の存在を視野の外においているなど、問題点が多く楽観的すぎる一冊。
43 セルジュ・ラトゥーシュ著 ; 中野佳裕訳 脱成長 白水社 2020.11 9784560510407 1200円+税 「脱成長」について斎藤氏とは違う観点から論じていて、斎藤氏よりも妥当性があるように思える概観。 蔵書情報 / Library information
44 ウィリアム・モリス作 ; 川端康雄訳 ユートピアだより 岩波書店 2013.8 9784003590317 1140円+税 マルクスの『資本論』第一巻のフランス語版を熟読することからモリスが紡ぎ出した未来社会像が語られている一冊。斎藤氏が言及されていないのは不可解。
蔵書情報 / Library information
45 ナオミ・クライン著 ; 中野真紀子, 関房江訳 地球が燃えている 大月書店 2020.11 9784272330997 2600円+税 クラインの気候変動や環境問題に関する論考を集めたもので、斎藤氏とは別の選択肢が提示されている。 蔵書情報 / Library information
46 小松左京 復活の日 角川文庫 2020.5 9784041065815 760円+税 1964年に初版が出たSF小説で、現在のパンデミックを予言しているようだとして話題になっているものの新版。初版のあとがきが再録されている。
47 ビュフォン [著] ; 菅谷暁訳 自然の諸時期 法政大学出版局 1994.9 4588004565 ヨーロッパでの地球の歴史についての捉え方を聖書の呪縛から解き放った革命的な研究の日本語訳。 蔵書情報 / Library information
48 エンゲルス著 ; 一條和生, 杉山忠平訳 イギリスにおける労働者階級の状態 岩波書店 1990.2 4003412907 570円 エンゲルスによるイギリスの労働者階級についての古典的なルポルタージュ。エンゲルスが資本主義をどのように捉えるところからスタートしたのかがわかる一冊。 蔵書情報 / Library information
49 ブルーノ・ラトゥール [著] ; 川村久美子訳・解題 地球に降り立つ 新評論 2019.12 9784794811325 2200円 (税別) 「人新世」に批判的でSDGsとも脱成長とも別の道を提唱している研究です。 蔵書情報 / Library information
50 Dipesh Chakrabarty the Climate of history in a planetary age The University of Chicago Press 2021.3 9780226732862 3709円(税込み) Chakrabartyの「人新世」をめぐる最新の論文集。日本語訳はまだない。
メッセージ/Message
 地球と人類の未来における存続が危ぶまれるだけでなく、人類の存在がパンデミックによって危機に瀕している現在、地質年代に由来する「人新世」という新しい概念を手がかりに、地球と人類の過去と現在を明日と結びつけるための道筋を考えることを、この授業では試みます。
 そのために、教科書とした斎藤幸平氏によるマルクスの『資本論』に基づく資本主義社会批判の問題提起に、歴史の観点から検証を加えていきます。また、斎藤氏の議論が「人新世」よりも「資本論」に重点を置いているのに対して、この授業では「人新世」の側に重点を置いて掘り下げてゆくことにします。そして、この「人新世」という概念が、宗教や芸術を含めたさまざまな領域を結びつけて、私たちの未来に希望の灯をともすものであることを明らかにしたいと思っています。
 パンデミックの後の、そしてSDGsの後の、この地球で私たちは、どのように生きていくのか、それに歴史の知恵はどのように役立てることができるのかを、考えるための授業としていきたいと思っています。 
 対面授業ではなく、オンライン授業であるのは、非常に残念なのですが、地球環境への負担を増やさず、教育の機会均等を確保するという観点から、現在の状況のもとでできることを考えるための機会を与えられたものであり、青山キャンパス・相模原キャンパスの学部・学年を問わない多くの学生と共に考えることができる貴重な場を設けることができるのだと、ポジティブに捉えたいと思います。
その他/Others
小テストへの回答がなされない場合が授業回数の三分の一を超えた場合、レポートの提出がなされなかった場合は、評価の対象としません。Course Powerにアクセスできないなどのシステム上のトラブルなどで回答できなかった場合は、Course Powerの質問機能を利用してお知らせください。
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