講義内容詳細:制度会計論A

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年度/Academic Year 2023
授業科目名/Course Title (Japanese) 制度会計論A
英文科目名/Course Title (English) Legal Financial Accounting A
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 上枝 正幸
英文氏名/Instructor (English) UEEDA Masayuki

講義概要/Course description
本講義「制度会計論A」では、簿記・会計の基礎知識を習得済の上級生を対象として、制度会計、すなわち法規制によって企業外部の利害関係者に報告する会計をポジティブ(positive)に考察する。ここでポジティブ(positive)とは、規範的(normative)という語と対置される言葉であり、「経済原則にのっとった」または「実証的に」という意味合いがある。会計制度・基準は「かようにあるべきである(または望ましい)」として規範的に規定されるという特徴を有し、よって制度内容および各個別の会計基準の詳細を理解し、運用できる能力が一方では会計専門家にとっては求められる。しかしながら、「なぜ」ある会計制度・基準が制定されかつ存続しているのか、あるいは会計制度・基準はそれらに準拠して行動する企業の利害関係者に「どのように」影響を及ぼし、かつまた影響を及ぼしあっているのかを考えることもまた、他方では会計専門家のみならず一般の社会人にとっても重要な課題であると考える。
 本講義「制度会計論A」で実施しようとしているのは、まさに後者であり、昨年度までと同様に、財務会計の論点に経済学の観点からアプローチした文献を主として扱いながら、会計上生じうる問題、それらに対処するための会計規制・会計制度を検討していきたい。たとえば、「利益操作や粉飾決算」という会計スキャンダルは、企業やそれをとりまく利害関係者が「合理的に(すなわち、経済原理にのっとって)」行動した結果として起こるものでもある、といった示唆に富んだ議論が扱われる。青山学院大学生にとってなんら理解が困難な箇所は存在しないが、ゲーム理論やミクロ経済学アプローチという新たな考え方の学習を伴うことから、ほぼすべての講義回の出席が可能かどうか、受講にあたっては自身の予定と照らし合わせて決定してもらいたい。
 なお、上記のような問題意識から講義を行ことから、個別の会計基準の解説ないし会計処理方法の具体的な中身の説明に割かれる時間は極小となる。このことには、十分に注意してもらいたい。
達成目標/Course objectives
制度会計をポジティブ(positive)に考察する。
企業の財務情報の提供、利益や資産・負債・資本の測定といった財務会計の理論的枠組みを考察し、かつそれら機能を経済学的に考えるという視点を理解することが本講義の到達⽬標になる。【講義概要】および【授業計画】の詳細を読んで履修を検討してもらいたい。
学部・研究科のディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)に基づき、当該科目を履修することで身につく能力 / Abilities to be acquired by completing the course in accordance with the faculty and graduate school diploma policy (graduation certification and degree conferral)
学部・研究科のディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)/ Undergraduate and Graduate Diploma Policy (Graduation Certification and Degree Conferral)
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
3・4年生向けの上級レベル科目である。
特段の難しい会計知識を直接に要求するわけではないものの、基本的な簿記・会計の知識を前提とする。
なお、同一時限の後期の「制度会計論B」は完全な別科目であり、「A/B」どちからのみでも履修可能である。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 「新しい制度会計論とは」【オンライン(オンディマンド型)】
 ・本講義で目指すものや講義の仕方、成績評価方法などの概要の説明
 ・経済学の考え方
2
授業計画/Class 「新しい制度会計論とは(序章)」
 ・教員(上枝)が執筆中のテキストの主題や考え方を知る。
 ・前回講義の「経済学の考え方」のフィードバックをする。
3
授業計画/Class 「わが国の財務会計制度ないし財務報告規制(第2章)」
4
授業計画/Class 「企業会計制度ないし財務報告規制の必要性に関する議論(第3章)(その1)」
 ・必要論と不必要であるとする議論のまとめ
5
授業計画/Class 「企業会計制度ないし財務報告規制の必要性に関する議論(第3章)(その2)」
  ⇨ 前回に引き続き、制度・規制の要否両論を確認する。
6
授業計画/Class 「経済的意思決定に有用な会計情報(第5章)(その1)」
 ⇨ 現行の財務報告の目的である経済的意思決定に有用な情報の提供について考える。
 ・有用な会計情報のための質的な要件、個人の意思決定と有用な会計情報のモデル化
7
授業計画/Class 「経済的意思決定に有用な会計情報(第5章)(その2)」
   ⇨ 前回(第⑥回)に引き続き、会計の意思決定有用性アプローチについて考察する。
 ・前回のフォローアップ(とくに情報のモデル化)、会計情報の有用性を確かめるための実証研究、その他
8
授業計画/Class 「会社・経営者による自発的な情報開示(ディスクロージャー)(第6章)(その1)」
  ⇨ 経済実験を通し、特定の条件のもとで、会社・経営者は自発的に情報を開示することを確認する。
9
授業計画/Class 「会社・経営者による自発的な情報開示(ディスクロージャー)(第6章)(その2)」
 ⇨ 経済実験を通し、特定の条件のもとで、会社・経営者は自発的に情報を開示することを確認した前回の内容を再確認し、現存データによるアーカイバル型の実証研究の知見や実務をみる。
10
授業計画/Class 「利益マネジメントと不正な財務報告(第7章)(その1)」
  ⇨ 会社・経営者には利益マネジメントの余地と動機があることを確認し、そのゲーム理論的なモデル化を始め、メリット・デメリットなども学習する。
11
授業計画/Class 「利益マネジメントと不正な財務報告(第7章)(その2)」
 ⇨ 会社・経営者には利益マネジメントの余地と動機があることを確認し、そのゲーム理論的なモデル化を始め、メリット・デメリットなども学習する。前(第⑩)回の残りからやっていくことになる。
12
授業計画/Class 「公認会計士・監査法人による監査(第8章)(その1)」
 ⇨ 経済実験を通じて、監査制度の必要性や現行の制度に内在する問題点を確認する。
   今回は、2つの経済実験を扱う。
13
授業計画/Class 「公認会計士・監査法人による監査(第8章)(その2)」
 ⇨ 経済実験を通じて、監査制度の必要性や現行の制度に内在する問題点を確認する。
   今回も、2つの経済実験を扱う。
14
授業計画/Class 「会計基準のコンバージェンスの諸問題(第10章)(その1)」
 ⇨ 会計基準の世界的なコンバージェンス(収斂)に関する論点につき、経済実験や経済学のモデルの分析を通して説明する。今回は、その前半部分を扱う。
15
授業計画/Class 「会計基準のコンバージェンスの諸問題(第10章)(その2)」
 ⇨ 会計基準の世界的なコンバージェンス(収斂)に関する論点につき、経済実験や経済学のモデルの分析を通して説明する。今回は、その前半部分を扱う。
 
事前学習/Preparation 該当回の内容に関して、以前の自らの会計学習の内容を復習しておく。
関連する論点につき、現行のわが国の会計制度を調べる。
事後学習/Reviewing 授業の最初、あるいは授業中に提示されたその講義回における論点、および結論に関してまとめる。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notes対面授業(通常型)(初回を除く)
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 70% * 受講生数が多くなった場合(概ね100名以上)、期末定期試験のみ(100%)で評価する場合がある。受講生数は、学期が始まらないとわからないことから、講義内外におけるアナウンスに注意してもらいたい。
2 平常点 In-class Points 30% 講義への参加(30%)* 単なる出席点ではなく、講義時間内の課題提出や問題演習の結果、実習等への参加による。
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
1 上枝正幸 経済学で考える制度会計 中央経済社 2022 4502418013 3,300
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 田村威文 ゲーム理論で考える企業会計—会計操作・会計規制・会計制度 中央経済社 2011 4502237809 3,740
2 ウィリアム H. ビーバー(伊藤邦雄(訳)) 財務報告革命(第3版) 中央経済社 2010 4561264221 3,630
3 ウィリアム R. スコット(太田康広・椎葉淳・西谷順平(訳)) 新版 財務会計の理論と実証 中央経済社 2022 4502427616 6,930
4 ジョン A. クリステンセン/ ジョール S. デムスキ(佐藤紘光(監訳)) 会計情報の理論—情報内容パースペクティブ 中央経済社 2007 450269301 7,040
5 斎藤静樹 会計基準の研究(増補改訂版) 中央経済社 2013 4502484903 4,620
6 椎葉淳ほか 会計ディスクロージャーの経済分析 同文舘 2010 339519531X 4,180
メッセージ/Message
過去8年度(間)の同様の講義はおおむね好評であり、2022年には、本講をもとにしたテキストの出版にもつながった。
しかしながら、(1)会計の制度⾃体(会計基準・処理⽅法など)が学習したい、また、(2)資格試験や部活動,就職活動などで講義への出席が制限される受講⽣には⼾惑いがあったようである。⼗分に注意してもらいたい。