講義内容詳細:電子計算機工学Ⅰ

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年度/Academic Year 2023
授業科目名/Course Title (Japanese) 電子計算機工学Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Computer and Digital Systems Ⅰ
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 井上 淳樹
英文氏名/Instructor (English) INOUE Atsuki

講義概要/Course description
電子計算機はパソコンだけでなく、携帯電話やTVなどの家電製品、車載機器など身の回りのあらゆる電子機器で用いられています。本講義では、これらの機器で用いられている共通技術として”ユーザーがプログラム可能な電子計算機の構成”を理解します。
まず最初に、ディジタル回路の基礎を理解し,簡単な論理回路の設計を学習します。次に,同期型順序回路,2進演算回路の考え方を理解し,電子計算機の構成要素がどのように作られているのかを学習します。学んだ構成要素をどのように組み合わせて計算機が作られているかを学習し、計算機上でソフトウェアが動作する様子を学習します。最後に計算機の性能をどのように評価すればよいかのを学びます。

本講義では計算機の構成要素を理解するとともにC言語プログラムなどソフトウェアがどのように計算機内で動作するかを短時間で学習するために理解に必要な主要な概念に絞って、授業をします。
第1回目の授業はオンデマンド型の授業となりますので、コースパワー上から配信されるビデオを各自で視聴してください。
達成目標/Course objectives
2値論理演算の概念を理解し,簡単な論理回路(組み合わせ回路や順序回路)の設計ができるようになることを目指します。複雑な動作をしているように見える電子計算機が、トランジスタというデバイスを基礎に、簡単な要素回路をさまざまに組み合わせたり、接続したりするだけで構成されていることをボトムアップ的に理解することができるようになります。電子計算機を構成する論理部品(マルチプレクサ,デコーダ,レジスタ メモリなど)の概要を理解し,ユーザーがプログラムしたとおりに電子計算機が処理を行っていることを理解します。
本講義の中で商用の32bit CPUを設計し、その基本動作をシミュレータ上で確認することを目標します。
本講義を受講することにより簡単なCPUの設計を一人でできるようになることを期待しています。
学部・研究科のディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)に基づき、当該科目を履修することで身につく能力 / Abilities to be acquired by completing the course in accordance with the faculty and graduate school diploma policy (graduation certification and degree conferral)
学部・研究科のディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)/ Undergraduate and Graduate Diploma Policy (Graduation Certification and Degree Conferral)
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
2年生までに学習した内容を前提知識とします。それ以外で必要になる最低限の知識は講義で説明します。簡単な微分方程式の解法、電気回路理論の基礎 C言語のプログラムなどを知っていると理解しやすいですが、必須ではありません。本講義では 各自のPCにソフトウェアをインストールして課題に取り組みます。このためWindowsPCまたはMacを必要とします。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 2値論理,基本論理演算(AND、OR、NOT、NAND、NOR、EX-OR)、真理値表
オンライン授業(オンデマンド型)での実施
2
授業計画/Class シャノンの展開定理と加法、乗法標準形
3
授業計画/Class カルノーマップ法による論理の簡単化
4
授業計画/Class CMOSロジック回路の構成法
5
授業計画/Class CMOS論理回路の伝搬遅延時間(Logical Effort法による算出方法)
6
授業計画/Class バッファ,デコーダ,マルチプレクサの構成と動作
7
授業計画/Class ラッチ,フリップフロップ(FF)とその特性
8
授業計画/Class 同期式順序回路の構成方法,サイクルタイム
中間レポート課題の出題
9
授業計画/Class コンピュータシステム構成と大容量記憶素子の構成と動作(レジスタファイル,SRAM,DRAM)
10
授業計画/Class 2進数、10進数、16進数、およびその相互変換
負数の表示,固定小数点、浮動小数点の表現方法
11
授業計画/Class 加減算アルゴリズムとハードウェアでの実現(補数による減算など)
12
授業計画/Class 電子計算機の構成要素とその動作(1) 命令セット
中間レポート解答例の解説
最終レポート課題の出題
13
授業計画/Class 電子計算機の構成要素とその動作(2) 制御回路の設計
14
授業計画/Class 電子計算機の構成要素とその動作(3) パイプライン処理
15
授業計画/Class 電子計算機の性能の評価
 
事前学習/Preparation 前日までに講義ビデオを視聴し、事前確認テストに回答し、事前質問を投稿してから授業に参加してください。講義は事前学習が行われていることを前提で進めます。
事後学習/Reviewing 授業後に理解度確認課題を何回か出します。
各回の授業の最後にミニッツペーパーを書いて、疑問に思ったことや質問を書きます。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notesプロジェクタを使って講義を進めます。講義資料は前の週までに、Course Power上に掲載しますので、各自、授業の前に印刷するか、PCにダウンロードして持参してください。前日までに講義ビデオを視聴し、事前確認テストに回答し、事前質問を投稿してから授業に参加してください。講義は事前学習が行われていることを前提で進めます。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 40% 各回の授業前(初回を除く)に授業資料をよく読み、事前学習講義ビデオを視聴します。また、Course Power上に掲載された選択解答式の事前確認テストに回答して、わからないことや疑問点を事前投稿しま。授業後に理解度確認課題を何回か出します。
各回の授業の最後にミニッツペーパーを書いて、疑問に思ったことや質問を書きます。ミニッツペーパーは直接評価せず、ボーナス点の加点に使用します。
2 レポート Report 60% 2回のレポート課題を出します。中間レポート課題は8回目の授業終了後に、最終レポート課題を12回の授業終了後に出します。授業で学んだことを総合的に使用して各自で課題解決を目指します。最終レポート課題では各自のPCにソフトウェアをインストールして実際に論理回路の動作を確認することが必要です。
課題(試験やレポート等)に対するフィードバックの方法/Feedback methods for assignments (exams, reports, etc.)
事後課題やレポートはコースパワーに電子ファイルとして提出してもらいます。コースパワーの機能を使って、各自の電子ファイルにコメントを書き込んでフィードバックをします。
教科書/Textbooks
 コメント
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1 本講義では、教科書は使いません。講義を進めるにあたり、資料をコースパワーで配布します。授業内容をより深く理解したい人には、下記の参考書の中では(1)が最も講義内容に近くなっていますので、買い求めるのがよいでしょう。参考書はいずれも相模原の図書館に所蔵されていますので、一度、眺めてみてください。
参考書/Reference books
 著者名
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タイトル
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出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
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1 サラ・L・ハリス, デイビッド・ハリス著 ; 天野英晴 [ほか] 訳 ディジタル回路設計とコンピュータアーキテクチャ エスアイビー・アクセス 2022.6 9784434305221 5000円+税 2)を易しくして、ボトムアップで説明した教科書。スタンフォード大学出身のハリスの著書。授業の内容に最も近い(授業内容の9割を包含)ので、教科書が何か必要と考える人は本書を購入することを推薦する。 蔵書情報 / Library information
2 David A. Patterson, John L. Hennessy Computer organization and design Morgan Kaufmann, Elsevier 2021年 9780128203316 12,524円(税込み) 世界中のコンピュータアーキテクチャの授業で使用されている、RISCの創始者であるヘネシーとパターソンの書いた名著。4年に1回改定され、最新版は第6版で2021年の出版。毎回日本語訳が出版されているが今回はまだ出版されていない。上下巻に分かれているが授業に関係するのは上巻。 蔵書情報 / Library information
3 井上淳樹著 基礎から学ぶ電子計算機工学(RISC-V版) [井上淳樹] 2022.1 9798794511871 2200円(税込み) この講義の講義資料集をまとめた電子書籍です。電子書籍(400円)はアマゾンでASIN ‏ : ‎ B09PK4X1QYで検索してください。 蔵書情報 / Library information
4 井上淳樹著 基礎から学ぶ電子計算機工学 Advanced Study1 [井上淳樹] 2022.1 9798794511871 990円(税込み) この講義の講義資料集のAdvanced Study編その1です。電子書籍(250円)はアマゾンでASIN:B07PHXWPNDで検索してください。 蔵書情報 / Library information
5 井上淳樹著 基礎から学ぶ電子計算機工学 Advanced Study2 [井上淳樹] 2022.5 9798832024349 1540円(税込み) この講義の講義資料集のAdvanced Study編その2です。電子書籍(250円)は、アマゾンでASIN ‏ : ‎ B0B2D2X7Q6で検索してください。 蔵書情報 / Library information
メッセージ/Message
プログラム可能な電子計算機は、昔は一部の人のための特別な道具でしたが、近年、PCやプリンタだけでなく、携帯電話やテレビ、エアコン、車などあらゆる分野の製品で使われており、今後、エンジニアを目指す人にはどんな分野であれ、知っていなければならない必須の教養、知識であるといえます。本講義では、その基礎となる知識を獲得し、一見、複雑に見える動作をする電子計算機が、単純な要素の組み合わせによってできているということを理解することを目標とします。この授業はCPUを設計してみることで計算機の構造を理解する方法をとります。
その他/Others
プロジェクタで授業を行いますので、前もって資料に目を通し、事前学習講義ビデオを視聴してから授業に参加することが肝要です。授業は事前学習が行われていることを前提に進め、授業中は演習問題を考えてもらう時間を重視します。授業後は授業の資料の内容をよく読んで、エクササイズを自分で解いてみることで理解が深まります。理解度確認課題や中間レポートはそれまでの授業を復習して自分の理解度を確認するために重要なステップとなります。この作業を繰り返せば一歩、一歩、理解が深まるように授業は構成されています。
この授業は”受け身で出席する”のではなく、”能動的に授業に参加する”という意識がないとすぐについてこれなくなります。

簡単な論理回路をパソコン上で設計できる初心者向けのツールを紹介(自分のPCにインストール可能な他、PC教室でも使用可能)し、自分で論理回路を設計して動作を確認することができます。授業で説明した論理回路の一部はファイルとして提供しますので、各自でこのツールを使って自分の理解度を確認することができます。このツールを使って商用の32ビットCPUを設計し、その基本動作(重要ないくつかの命令がパイプライン方式のCPUで動作すること)を授業中に示します。また、このツールを使って最終レポート課題に取り組みます。

自習をしたい人向けには自習問題の準備もしています。
また、さらに進んだ学習をしたい人向けには、Advanced Study資料をコースパワー上で配布します。
分からないことや理解しにくいことに対する質問には毎回のミニッツペーパーを利用して質問する事ができるようにしますが、それ以外にも相談や質問がある人には個別に別途時間(オフィスアワー 金曜日 4限目の予定)を設けてあります。また、希望者にはオンライン(WebEX Meeting)で質問、相談を受け付けます。

本講義では、コンピュータの設計に携わってきた講師の実務経験に基づいて、最新のCPUの設計例を題材にして、計算機の設計に必要な基礎知識を学ぶことができます。

キーワード/Keywords
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