講義内容詳細:自己理解(個別科目)[オンライン][火曜日開講・時限不定]

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 自己理解(個別科目)[オンライン][火曜日開講・時限不定]
英文科目名/Course Title (English) Self-Understanding(Independent Courses)[Online]
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 福田 大輔
英文氏名/Instructor (English) FUKUDA Daisuke

講義概要/Course description
 「自分のことは自分が一番よくわかっている」と誰しも考えているのではないだろうか。他人には自分の痛みや感情などは伝わらない。自分は自分で、他人は他人だ!と考えたくなるのはもっともだと思われる。ただ、小説を読んで、自分の考えが自分よりも明晰に書かれていて、「自分の考えていることはまさにこれだ!」「自分のことが書かれている?!」と驚いたこともあるのではないか。「わたし」と「あなた」は個体としては区切られてしまっているけれども、わたしたちは言葉を話す動物であって、その言語の働きによって自分とは何かを把握することになる。
 とはいえ、「言語を言語として捉える」といわれてもピンとこないのではないか。母語は自由に話せるとして、と第一外国語と第二外国語くらいをそれ相応に話せるとしても、自分の話している(話すことのできる)言語を一歩引いて、《言語》という対象として意識するのはなかなか難しい。そのために言語学を学ぶ必要があるし、言語学の知見によって日本語話者なら日本語、英語話者なら英語、中国語話者なら中国語の構造が客観的に見えてくる。それによって、自分の語り方も変わってくることもある。自分の語り方が変わるということは、自分が世界を切り取る仕方が変わり、さらには自分と他者の関係性の受け止め方も変わってくることになる。
 こうした方向性のなかに精神分析は存在する。すなわち、自分の話す言語に意識的なることよって、「自分でも気づかないこと」を自分で意識したり、自分の言い間違いのうちに自分の欲望を見出したりすることで、「無知の知」を目指していくのである。そればかりではない。精神分析は、自分の症状の原因がわからなくなってしまった人びとにたいして、「自分が何であるか」「自分が何をすべきか」「自分が何を希望すべきか」を掘り下げることを可能にさせる技法にもなっている。しかも、自分が思いついたことを、そのまま思ったとおりに、何の危惧も検閲もすることなく、自由に語ることで、精神的な病を治療すると言われたら、みなさんはどう考えるだろう?
 この講義の題名と関わらせていえば、精神分析とは、「自分のことは自分が一番よくわかっている」ことは認めつつも、「それがすべてではない」ことを強い仕方で示して、「自己理解できていない」部分を炙り出す方法だと考えてもらってよいと思う。これは就職活動時に必ず話題になる「自己分析」とも、よく雑誌や広告に載っている心理テストとも異なるものとなっている。高校時代に倫理の授業で習ったひともいるかもしれないが、ジグムント・フロイト(1858-1939)が1900年に『夢解釈』を出版したのを端緒として、精神分析の歴史は始まっており、それから120年余りのあいだ、精神分析は独自の進化を遂げてきている。その最新版の考え方をこの講義を受講する学生とともに考えていければと思っている。

達成目標/Course objectives
なし
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
なし
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ・精神分析とはなにか?精神医学や臨床心理学との差異
2
授業計画/Class ・精神分析と言語(1)
3
授業計画/Class ・精神分析と言語(2)
4
授業計画/Class ・精神分析における基本概念(1)抑圧と症状について
5
授業計画/Class ・精神分析における基本概念(1)抑圧と原抑圧について
6
授業計画/Class ・フロイト精神分析の基本概念(2)欲動と昇華
7
授業計画/Class ・フロイト精神分析の基本概念(2)欲動と昇華 
8
授業計画/Class ・精神分析の基本概念(3)無意識と反復
9
授業計画/Class ・精神分析の基本概念(3)無意識と反復
10
授業計画/Class ・精神分析的読解(徴候的読解)とはどのようなものなのか?(1)
11
授業計画/Class ・精神分析的読解(徴候的読解)とはどのようなものなのか?(2)
12
授業計画/Class ・精神分析読解を独自に行った作家  三島由紀夫を読んでみる
13
授業計画/Class ・精神分析読解に抗した作家  三島由紀夫の『音楽』を読んでみる(第一回)
14
授業計画/Class ・精神分析読解に抗した作家  三島由紀夫の『音楽』を読んでみる(第二回)
15
授業計画/Class ・まとめ
 
事前学習/Preparation 三島由紀夫の『音楽』は面白い小説として精神分析の臨床を擬似的に体験できる稀有な本なので、受講生の皆さんは読み進めていくことを推奨する。
事後学習/Reviewing 三島由紀夫の『音楽』は面白い小説として精神分析を学べる稀有な本だが、幾度か読むことで疑問が噴出してくるという意味でとても問題的な本でもある。受講生の皆さんは再読することを推奨する。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class オンライン授業 / Online
実施形態/Class Method オンデマンド型 / on-demand
補足事項/Supplementary notes毎週火曜日17時までにオンデマンド動画をアップします

活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 100% 期末レポート100%とする。レポートの分量については講義内で説明する。
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
1 福田大輔 筋肉のメランコリー 晃洋書房 2021.9 9784771035287 2500円+税
2 アラン・ヴァニエ  (赤坂和哉, 福田大輔訳) はじめてのラカン精神分析 誠信書房 2013.11 9784414404203 2000円+税
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
 
1 三島由紀夫 『音楽』 新潮文庫 1970
2 三島由紀夫 『仮面の告白』 新潮文庫 1950
その他/Others
 講義時に指示。