講義内容詳細:史学特講A(4)

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 史学特講A(4)
英文科目名/Course Title (English) Lecture on History A (4)
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 古川 江里子
英文氏名/Instructor (English) FURUKAWA Eriko

講義概要/Course description
 日本の歴史の中で、近代は近代化の成功による植民地化の回避という成功と太平洋戦争による国家存亡の危機という失敗の激動の時代なので、その時代を見つめなおすことは今日の政治、社会生活を豊かにする上での有益なヒントを得ることができます。
 本講義では、特に知識人に焦点を当てて、日本の近代の特質を考えます。それは植民地化の回避という課題を背負ったために、前近代とは全くことなる西欧をモデルとする体制への移行の必要があったため、人々にそのビジョンを示す役割を果たした知識人の存在がとりわけ重要であったことによります。
 前期の授業では、日本の近代化のビジョンを提示した明治の代表的知識人の福沢諭吉を取り上げましたが、後期の授業では、大正から昭和期(高度経済成長時代)の代表的知識人の長谷川如是閑(にょぜかん)を取り上げます。
 1875年生まれの長谷川如是閑は、新聞『日本』の記者をジャーナリストとしての出発点に、『大阪朝日新聞』記者、そして雑誌『我等』「批判」を主宰し、大正期には、大正デモクラシーを主導した知識人です。その後は、日中戦争以後は、デモクラシーを否定し、戦時協力的な言説を展開し、結果的には太平洋戦争に導いていく役割を果たしてしまいました。敗戦後は自省し、高度経済成長につながるビジョンを提示しました。
 激動の時代と格闘し、最後には繁栄のビジョンを提示するにいたった長谷川ですが、戦前の民主主義の可能性を否定する役割を果たした問題性は大きいものと言えます。なぜ、長谷川は民主主義否定に至ったのかを解明することは、民主主義をとる今日、同じ道をたどらないための多くの手掛りが得られるいえます
 民主主義をとっている今日をより良き方向に導く思考とは何かを、これからの時代の担い手となる皆さんと一緒に考えることを目的とします。
達成目標/Course objectives
近代化の成功から敗戦という激動の近代日本の政治・社会、そこで懸命に生きた人々の歩みを見つめ直すことにより、現代の私たちがよりよき時代を築いていくための知恵を共に考え、得ていくことを目的とします。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 第1回オリエンテーション(自己紹介・講義の概要・受講上の注意・成績評価の基準の説明)

★この回は、オンデマンド型(音声とプリント)で授業を行います。コースパワーで配布したプリントを参照しながら、音声ファイルを聞いて、授業を受けてください。授業後にコースパワーを通してのアンケートを行いますので、忘れないで、ご提出ください。


2
授業計画/Class 第2回 知識人とは何か?ーその存在と近代日本における意義について
3
授業計画/Class 第3回 戦争原因としての大正デモクラシーの位置づけ①戦争原因の整理
4
授業計画/Class 第4回 戦争原因としての大正デモクラシーの位置づけ②長谷川如是閑の重要性
5
授業計画/Class 第5回 大正・昭和の知識人ー長谷川如是閑
6
授業計画/Class 第6回 デモクラシー思想の原点ー生い立ちと思想形成
7
授業計画/Class 第7回 平等化思想の萌芽期の明治30年代の状況と理解を深めるためのビデオ鑑賞『映像の世紀』明治編

※ビデオ鑑賞については、状況により鑑賞できない場合があります。その場合は、コースパワーもしくは授業内でお知らせします。
8
授業計画/Class 第8回 新聞記者時代ー新聞『日本』と『大阪朝日新聞』での平等化思想の展開
9
授業計画/Class 第9回 雑誌『我等』の創刊による独立的立場の確立による平等化構想の提示⑴理想の国家・社会像

10
授業計画/Class 第10回 雑誌『我等』の創刊による独立的立場の確立による平等化構想の提示⑵現状分析と新たな国家・社会像
11
授業計画/Class 第11回 理念と現実の相剋-知識人としての試みの成否(1919~1931年9月満州事変前までの評論)
12
授業計画/Class 第12回理念と現実の相剋-知識人としての試みの成否(31年9月満州事変以後~45年8月)
13
授業計画/Class 第13回 民主主義から全体主義へー挫折の要因の考察

14
授業計画/Class 第14回 帰納法的思考の成果としての戦後日本の方向性の提示
15
授業計画/Class まとめー長谷川の試行錯誤から知のあり方を問う
 
事前学習/Preparation コースパワーを通して配布した授業プリントや資料プリントを一読しておいてください。
事後学習/Reviewing 授業後に授業プリントや資料プリントを復習してください。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method ハイブリッド型ブレンド形式 / hybrid blend
補足事項/Supplementary notes本講義は、対面授業(通常型)もしくは、オンラインで実施します。感染状況に問題がなければ、対面授業を行う方針ですが、状況次第でオンライン授業の導入(音声とプリントによる)となる場合もあります。

講義の要点をまとめたレジメや史料プリントをコースパワーを通して配布し、パワーポイントを使いながら授業を進めていきます。例年でしたら、プリント類を授業において配布していましたが、今年度はコロナ感染防止の観点から、授業内でのプリント類の配布はできない可能性が高いので(状況が良くなっていたら変更しますが)、各自で事前にコースパワーからプリント類をプリントして、授業を受けてください。

 文献史料の他、写真・音声・映像などの視聴覚資料(映像は対面の場合のみ)も活用し、みなさんの興味や理解を深める工夫をしていきたいと考えています。

また、今年度もコロナの状況によるシラバスの変更などもありますので、その点をご理解ください。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 100% 評価については、学期末のレポートか試験かで70点、残りの30点は平常点で(授業内で鑑賞するビデオの感想やコースパワー上のパスワードによる出席登録など)によって行います。学期末での評価がレポートか試験、どちらになるかは感染状況や受講者の人数などで決めます。
教科書/Textbooks
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1 特定のものは使いません。参考文献を授業中に適時、指示します。
参考書/Reference books
 著者名
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タイトル
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出版社
Publisher
出版年
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コメント
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1 古川江里子 『大衆社会化と知識人ー長谷川如是閑とその時代』 芙蓉書房出版 2004年 大学図書館にも所蔵がありますので、必要に応じて、ご参照ください。
メッセージ/Message
 
対面なら講義は、パワーポイントと講義内容を要約したプリントをコースパワー上から配布して授業を進めていきます。もし感染状況が悪く、オンラインとなった場合は、講義の音声ファイルを使って進めていきます。なお、感染防止上の観点からプリントなどは、コースパワーにアップする形での配布となります。(授業中にパソコンやタブレットの持ち込みはオッケーです)
 また、感染状況などにより、シラバスの内容を変更する場合もありますので、この点、ご理解ください。
その他/Others
日本史を高校で選択していない人は、教科書や概説書などを読んでおくことを勧めます。
キーワード/Keywords
日本近代の歴史考察によって今日や未来の発展につながる知恵の模索