講義内容詳細:ヒューマンライツの現場B/ヒューマンライツの現場B(再)/ヒューマン・ライツの現場B

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年度/Academic Year 2025
授業科目名/Course Title (Japanese) ヒューマンライツの現場B/ヒューマンライツの現場B(再)/ヒューマン・ライツの現場B
英文科目名/Course Title (English) Human Rights B
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 申 惠手/森本 麻衣子
英文氏名/Instructor (English) SHIN Hae Bong/MORIMOTO, Maiko

講義概要/Course description
人権について学ぶとき、従来の法学部教育では、憲法や法律の規定とその解釈(学説・判例)から入るのが通例だった。それも必要だが、そのような方法だけでは、人権の重みや法の役割について実感することは難しい。この授業は、「ヒューマンライツの現場A」と並び、ドキュメンタリー映像やゲストスピーカーのお話を通して様々な人権問題をまず知ることから始めようとする試みである。その上で、①それらの問題に対して法はどのような役割を果たしうるのか、②事件や事故の被害者が法的に責任を明らかにしようとするときどのような問題に直面しうるか、③そもそも私たちはその問題を人権問題として認識してきたか、といった問題を考えていく。

①は、既存の法規定を現実にどのように適用できるか(解釈論)と、既存の法規定が不十分な場合にどのような法規定が必要か(立法論)の両方に関連しているが、後者も大切である。例えば、会社が労働基準法などに違反しているのであれば、労働者は「法律を守れ!」と求めることができるし、いざとなれば会社を相手取って裁判を起こすことも可能だ。これは、既存の法を解釈・適用する側面だ。しかし、もし法律が、労働時間についての規定を置いていないとしたらどうか。法律の規定がないとか、あったものが撤廃されるというのは、権利を主張するための「よりどころ」がないということだ(法律自体が人権侵害をもたらしてしまっていると言える場合もそうで、その場合は法改正が必要になろう)。②事件や事故の被害者が民事裁判で相手方の責任を追及する際、多くは損害賠償請求という形になるが、そのことで「金目当てか」などと誹謗中傷されることもある。授業では、実際の裁判の例から、過失に対する個人の責任と組織の責任、それを明らかにする法過程、日本社会の法意識などについて考えていく。③では、深刻な人権問題でありながら日本で放置されてきた事柄について、メディアの役割や「ビジネスと人権」の観点も含めて取り上げる。

なお、扱うテーマや順番はあくまで予定であり、変更がありうる。
達成目標/Course objectives
授業では、ドキュメンタリー映像やゲストスピーカーのお話にふれた上で、補足説明も交えて理解を深めることで、自分がいかにそれらの問題について知らなかったか、あるいは知ろうとしなかったかをまず自覚するはずである。そのようにして実際の人権問題に向き合っていく中で、それらが、自分と同じくかけがえのない人生を生きている人たちの問題だということや、自分も決して無関係ではないことを認識すること、そのような意味での想像力(人権感覚)を養うことがまず一つの目標である。また、それぞれの人権問題に対して、法がどのように関わっているか、法の役割について考えを致し、法律や条例などを作る政治的プロセスをも視野に入れて、法学部でこれから学んでいく上での確かな目的意識を持つことも、重要な目標である。
学部・研究科のディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)に基づき、当該科目を履修することで身につく能力 / Abilities to be acquired by completing the course in accordance with the faculty and graduate school diploma policy (graduation certification and degree conferral)
学部・研究科のディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)/ Undergraduate and Graduate Diploma Policy (Graduation Certification and Degree Conferral)
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class オリエンテーション(オンデマンド)
2
授業計画/Class 子どもたちの命を守る責任(1)
3
授業計画/Class 子どもたちの命を守る責任(2)
4
授業計画/Class 子どもたちの命を守る責任(3)
5
授業計画/Class 子どもたちの命を守る責任(4)
6
授業計画/Class 労働者の人権(1)
7
授業計画/Class 労働者の人権(2)
8
授業計画/Class 労働者の人権(3)
9
授業計画/Class 労働者の人権(4)
10
授業計画/Class 原発事故と人権(1)
11
授業計画/Class 原発事故と人権(2)
12
授業計画/Class 原発事故と人権(3)
13
授業計画/Class メディアと人権/世界のヒューマンライツと日本のヒューマンライツ(1)
14
授業計画/Class メディアと人権/世界のヒューマンライツと日本のヒューマンライツ(2)
15
授業計画/Class メディアと人権/世界のヒューマンライツと日本のヒューマンライツ(3)
 
事前学習/Preparation 社会の中には様々な人権問題があり、それらを扱った優れたルポルタージュやドキュメンタリー映像もあるが、社会で起きていることについて自分自身でアンテナを張って意識的に知ろうとする努力をしなければ、問題があっても目に入らないままになってしまう。ネットで自分の見たいものだけを見るのではなく、日常的に新聞や本を読み、また映画を見に行くなどして、学ぶ姿勢をもつこと。
事後学習/Reviewing 提出されたリアクションペーパーやミニレポートについては、適宜、全員分又は一部をファイルにまとめ、参照できるようコースパワーに提示する。ディスカッション後、ないし一つのテーマを扱い終わった後には、それらを各自参照して他者の考えにふれ、自分の考えをいっそう深めてほしい。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notes担当者のうち1名は国際人権法を専門とする教員(申)、1名は文化人類学・社会学の観点から人権問題に取り組むとともにジャーナリストとしての活動もしてきた教員(森本)である。毎回、この2名が共に授業を担当する。
授業は、一つのテーマにつき、ドキュメンタリー映像視聴(又はゲストスピーカーのお話)➡教員からのコメントや文献による補足➡グループディスカッションという流れで、原則として3回~4回の授業をあてる形で進行させる(一つのテーマについて充てる授業の回数は、扱う映像の長さや数などによる)。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 80% リアクションペーパー及びミニレポートの形で提出された文章から、テーマに対して本人が真摯に向き合ったことがどれだけ示されているかによって評価する。リアクションペーパーは、映像視聴又はお話を聞いた後の感想・考えを記したものでよいが、教員の補足・コメントを聴きグループディスカッション後に出すミニレポートは、授業で用いた参考資料も読み、さらに考えを深めた上でのものであることが求められている。
2 レポート Report 20% 授業でカバーできる人権問題には限りがあること、及び授業で観る映像資料等だけでは問題の背景や現状について知り考えるには不十分であることに鑑み、指定した文献を読んで考えたことや問題意識をもったことについてまとめたレポートとして学期末に提出することを課す(枚数等の詳細についてはオリエンテーション時に説明する)。このレポートも成績評価の対象とし、上記の平常点を合わせた成績で総合的に評価を行う。
教科書/Textbooks
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1 教科書は使用しないが、読んでレポートを書く課題図書(2冊とも)を下記の「参考書」欄に示す。
参考書/Reference books
 著者名
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タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
価格
Price
 
1 河上正二・吉岡和弘・齋藤雅弘 『水底を掬う―大川小学校津波被災事件に学ぶ』 信山社 2021 1,800円
2 過労死弁護団全国連絡会議(編) 『過労死-過重労働・ハラスメントによる人間破壊』 旬報社 2022 1,300円