講義概要/Course description
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ルポルタージュとジェンダーが本講義の副タイトルである。本年は、H・アーレントによる著名な国際裁判傍聴レポート、『エルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告』を多角的に――民族衛生(優生)学、人口、産業構造、システム化、マインドの構成、カント、etc.――精読する。共同体における悪の発生とその歯止めのなさはいかに成立するのか。ひとはどのようにして素知らぬ体で社会的排除を完遂するのか。排除社会のなめらかさとその活用に長けた支配性を解析すること。つまりそれは、この日本社会(人)の表徴である無責任、無関心、その度を越したありきたりさと活用や支配について、構造的な解明をおこない、わたしたち自身のほんとうの〈相貌〉を見つめる鏡を作る作業ともなる。
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達成目標/Course objectives
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テクストおよび映像を素材とし、それらを順次読み解くなかに、声なき声を聴き、中心的支配性を相対化する人間のありかた、生活、視角、テクスト、感性などを探索する。みずからもまたその例外ではない共同体の構成員として問題を引き受け、理解、さらに解決にむけて対処できるような視座、思想、文章表現、感受性を獲得する。「凡庸な悪」という凡庸な一般理解の向こうにある、言葉と思想をみずからのものとしたい。
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学部・研究科のディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)に基づき、当該科目を履修することで身につく能力 / Abilities to be acquired by completing the course in accordance with the faculty and graduate school diploma policy (graduation certification and degree conferral)
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学部・研究科のディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)/ Undergraduate and Graduate Diploma Policy (Graduation Certification and Degree Conferral)
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授業計画/Lecture plan
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1
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授業計画/Class |
導入ーー授業およびここでの問題意識について。(9/21オンライン授業(オンデマンド型)での実施、以降もコースパワーでの連絡が必ず通じるようにしておいてください。) |
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2
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授業計画/Class |
導入として、ルポルタージュについて、また関連する文献、問題意識の所在についてさらに説明する。 各自の発表について。
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3
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授業計画/Class |
ルポルタージュの現代的古典、鎌田慧『自動車絶望工場――ある季節工の手記』を読む。服従と力。ベルトコンベアの思想、ヘンリー・フォード。 |
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4
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授業計画/Class |
ルポルタージュの現代的古典、石牟礼道子『苦海浄土――わが水俣病』を読む。自然、資本、国策、システム、(無)責任。 |
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5
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6
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7
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授業計画/Class |
事態の推移ーー何がどうもくろまれていたのか。 |
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8
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授業計画/Class |
法の枠組みと構成。〈正常〉(normality)なるものの実態と諸階級の実態。 |
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9
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授業計画/Class |
映像資料による理解。 (オンライン〔オンデマンド型〕を予定。) |
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10
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11
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授業計画/Class |
歴史的事項の学習(2)。システムをめぐるアドルノ。「無感覚」の構成。
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12
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授業計画/Class |
判決と良心。政治的擬制を回避して、なにが見えるか。 |
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13
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授業計画/Class |
責任と判断。アーレントは何を理解し、またし得なかったのか。 |
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14
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授業計画/Class |
日本の近代性、環境との照合。1/11オンライン授業(オンデマンド型) |
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15
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授業計画/Class |
まとめ――これまでの考察へのリフレクション。1/18オンライン授業(オンデマンド型)
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事前学習/Preparation |
前回までの考察を踏まえ、問題意識を深めながら、課題文献について必ず読んでくること。
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事後学習/Reviewing |
授業内で提示された課題について、資料の渉猟、また課題文献の読み直しに努めること。 |
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授業方法/Method of instruction
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区分/Type of Class |
対面授業 / Classes in-person
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実施形態/Class Method |
ハイブリッド型ブレンド形式 / hybrid blend
補足事項/Supplementary notes講義+発表+講読+討議形式。指定したテクストについて毎回担当者を決め発表、精読に資するものとする。そしてさらに討議、考察シートを提出する。 状況によっては(もしくは数回分)、大学の提供するCourse Power と Webex を使用する授業形態が考えられます。その際は受講者の受講環境に配慮、相談しつつ進めます。詳細は第2回目以降の授業で指示しますのでよくご確認ください。
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活用される授業方法/Teaching methods used |
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成績評価方法/Evaluation
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1 |
平常点 In-class Points
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60%
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毎回、授業時に提起された問題に対する考察レポートを課す。クライテリアは、講義内容を前提とし、調査、社会的思考、理論的読解ができているか。文の巧拙をも含む。(40%) 講読文献の発表(担当回)。レジュメの構成と内容、問題把握の深度、丁寧な説明ができているか、が評価基準。(20%)
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2 |
レポート Report
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40%
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期末レポートを課す。クライテリアは上記レポートに同じ。
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課題(試験やレポート等)に対するフィードバックの方法/Feedback methods for assignments (exams, reports, etc.)
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毎回大量の添削結果が提示され、それ自体が授業内での相互啓発の契機を構成する。
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教科書/Textbooks
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| 著者名 Author | タイトル Title | 出版社 Publisher | 出版年 Published year | コメント Comments |
1 |
ハンナ・アーレント
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『エルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告』 (大久保和郎訳)
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みすず書房
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1969、2017どの版でもよい。
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関連授業資料はプリントで配布する。電子ブックも利用可能。また英語版"Eichmann in Jerusalem: A Report on the Banality of Evil"は、February 8, 1963の "The New Yorker"初出誌ともども各種探索してみてください。
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参考書/Reference books
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| コメント Comments | |
1 |
『エルサレム〈以前〉のアイヒマン』はじめ、授業テーマごとに、随時紹介します。
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