講義内容詳細:表象文化論Ⅱ[1]/表象文化論[1]

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年度/Academic Year 2018
授業科目名/Course Title (Japanese) 表象文化論Ⅱ[1]/表象文化論[1]
英文科目名/Course Title (English) Theory of Culture and Representation Ⅱ [1]/Theory of Culture and Representation [1]
学期/Semester 後期/通年 単位/Credits 2/4
教員名/Instructor (Japanese) 松岡 智之
英文氏名/Instructor (English) MATSUOKA, Tomoyuki

講義概要/Course description
『源氏物語』にかかわる絵画、音楽、能を考える 平安時代から中世に至る日本の伝統的な表象文化の中から絵画、音楽(舞楽)、能を扱います。絵画は「国宝源氏物語」(「徳川・五島本源氏物語絵巻」)です。この絵巻の概略や「吹抜屋台」「引目鉤鼻」等のごく基本的な概念から学びます。そして各画面にかかわる『源氏物語』の内容を把握し、絵巻の詞書にも注意しつつ各画面に関する諸説を商量して、分析的に論評するための着眼点を学びます。
 次に、『古今著聞集』所収の説話を手がかりに、雅楽を中心とする日本の伝統的な音楽(舞楽)の基礎知識を学びます。これらをふまえ、『教訓抄』などの楽書を参照しながら、『源氏物語』中の音楽(舞楽)にかかわる重要箇所を読み解き、『源氏物語』が音楽の教養や理念をいかに位置づけ、また楽器の音色や舞う身体、歌う声をいかに表現しているかを考えていただきます。
 最後に能を取り上げます。能の歴史の概略を学び、続いて『三道』などの能楽論の講読によって世阿弥の作劇法のおおよそを把握します。そして、これらをふまえて、謡曲「半蔀」「葵上」「野宮」「源氏供養」などの源氏能について、詞章の構成の仕方(小段構造)や言葉と所作との関係などに注意しながら、各曲が『源氏物語』をいかに再構成しているかを考えていただきます。
達成目標/Course objectives
 日本文学の文学現象を幅広い視野で把握できるように、文学にかかわりの深い表象文化に関する基礎的な知識、表象文化論の基本的な観点を会得すること、それらを用いて、具体例について独自の調査、考察を行って的確に論じられるようになることがこの授業の目標です。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
なし
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class イントロダクション
事前学習/Preparation 「表象文化論」をWeb検索して理解しやすい説明を写し取り、重要箇所に下線を施すなどして整理しておく。「源氏絵」「源氏物語絵巻」「吹抜屋台」「引目鉤鼻」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。
事後学習/Reviewing 授業をふり返り、「表象文化論」が一般にどのような学問であるか。また、この授業の内容、目標が何であるかをまとめる。
2
授業計画/Class 『源氏物語』から源氏絵へ(一)「国宝源氏物語絵巻」蓬生・関屋・柏木第一段
事前学習/Preparation 「三省堂 ワードワイズ・ウェブ」の倉田実「絵巻で見る平安時代の暮らし」の第22~24回を読み、重要箇所を抜き書きし、要点をまとめる。
事後学習/Reviewing 講義内容をふまえ、「国宝源氏物語絵巻」蓬生・関屋・柏木第一段の各画面の特徴を整理する。また、各画面が何を表象していると読めるのか自らの所見をまとめる。
3
授業計画/Class 『源氏物語』から源氏絵へ(二)「国宝源氏物語絵巻」柏木第二段~御法段
事前学習/Preparation 「三省堂 ワードワイズ・ウェブ」の倉田実「絵巻で見る平安時代の暮らし」の第11回、第25~30回を読み、重要箇所を抜き書きし、要点をまとめる。
事後学習/Reviewing 講義内容をふまえ、「国宝源氏物語絵巻」柏木第二段~御法段の各画面の特徴を整理する。また、各画面が何を表象していると読めるのか自らの所見をまとめる。
4
授業計画/Class 『源氏物語』から源氏絵へ(三)「国宝源氏物語絵巻」竹河段~東屋段
事前学習/Preparation 「三省堂 ワードワイズ・ウェブ」の倉田実「絵巻で見る平安時代の暮らし」の第31~38回を読み、重要箇所を抜き書きし、要点をまとめる。
事後学習/Reviewing 講義内容をふまえ、「国宝源氏物語絵巻」竹河段~東屋段の各画面の特徴を整理する。また、各画面が何を表象していると読めるのか自らの所見をまとめる。
5
授業計画/Class 『古今著聞集』巻六「管絃歌舞」を読む(一)230-243
事前学習/Preparation 独立行政法人日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー」の「舞台芸術教材で学ぶ」の「雅楽」を閲覧し、重要事項を写し取るなどして整理する。
事後学習/Reviewing 講義での解説をもとに、『著聞集』詩歌管弦説話から抽出できる表象=認識システムをまとめる(1)。
6
授業計画/Class 『古今著聞集』巻六「管絃歌舞」を読む(二)244 -256
事前学習/Preparation 「源博雅」「其駒」「多政資」「催馬楽」「伽陵頻伽」「玄象」「源経信」「豊原時元」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。
事後学習/Reviewing 講義での解説をもとに、『著聞集』詩歌管弦説話から抽出できる表象=認識システムをまとめる(2)。
7
授業計画/Class 日本音楽史(中世まで)と『教訓抄』、『源氏物語』と催馬楽
事前学習/Preparation 「日本音楽 歴史」「教訓抄」「狛近真」「源氏物語 催馬楽」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。日本音楽史では雅楽と能楽とを中心にする。
事後学習/Reviewing 講義内容をふまえ、「事前学習」のノートを再整理する。
8
授業計画/Class 『源氏物語』の舞楽(一)紅葉賀・花宴巻
事前学習/Preparation 「源氏物語 紅葉賀巻」「源氏物語 花宴巻」「青海波」「春鶯囀」「柳花苑」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。
事後学習/Reviewing 講義内容をもとに、『源氏物語』において舞う身体、歌う声がどのように表象されているかまとめる。
9
授業計画/Class 『源氏物語』の舞楽(二)胡蝶巻ほか
事前学習/Preparation 「源氏物語 胡蝶巻」「雅楽寮」「皇麞」「催馬楽 安名尊」「喜春楽」「催馬楽 青柳」「季の御読経」「鳥の楽」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。
事後学習/Reviewing 講義内容をふまえ、『源氏物語』胡蝶巻から読み取れる、行事における音楽・舞楽の位置づけをまとめる。
10
授業計画/Class 『源氏物語』の管絃
事前学習/Preparation 「源氏物語 女楽」「源氏物語 琴」「源氏物語 琵琶」「源氏物語 横笛」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。
事後学習/Reviewing 講義内容をふまえ、『源氏物語』から読み取れる、音楽の理念をまとめる。
11
授業計画/Class 世阿弥『三道』を読む
事前学習/Preparation 独立行政法人日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー」の「舞台芸術教材で学ぶ」の「能楽」を閲覧し、重要事項を写し取るなどして整理する。「世阿弥 三道」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。
事後学習/Reviewing 講義内容をふまえ、世阿弥の作劇法についてまとめる。
12
授業計画/Class 謡曲「半蔀」「夕顔」を読む
事前学習/Preparation 「源氏物語 夕顔巻」「謡曲 半蔀」「謡曲 夕顔」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。
事後学習/Reviewing 講義内容をふまえ、謡曲「半蔀」「夕顔」について、小段構造や詞章のことばと所作との関係などに注意しながら、各曲が本説の『源氏物語』をいかに再構成しているかをまとめる。
13
授業計画/Class 謡曲「葵上」「野宮」を読む
事前学習/Preparation 「源氏物語 葵巻」「源氏物語 賢木巻」「謡曲 葵上」「謡曲 野宮」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。
事後学習/Reviewing (事後学習)講義内容をふまえ、謡曲「葵上」「野宮」について、小段構造や詞章のことばと所作との関係などに注意しながら、各曲が本説の『源氏物語』をいかに再構成しているかをまとめる。
14
授業計画/Class 謡曲「松風」「源氏供養」を読む
事前学習/Preparation 「源氏物語 須磨巻」「謡曲 松風」「謡曲 源氏供養」「源氏物語表白」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。
事後学習/Reviewing 講義内容をふまえ、謡曲「松風」「源氏供養」について、小段構造や詞章のことばと所作との関係などに注意しながら、各曲が本説の『源氏物語』をいかに再構成しているかをまとめる。
15
授業計画/Class 謡曲「玉鬘」「浮舟」を読む
事前学習/Preparation 「源氏物語 玉鬘」「源氏物語 浮舟」「謡曲 玉鬘」「謡曲 浮舟」をWeb検索し、出典をメモしながら各webページの役立ちそうな説明を写し、整理しておく。
事後学習/Reviewing (事後学習)レポートを作成する。
授業方法/Method of instruction
講義形式で行う
成績評価方法/Evaluation
1 100% 学期末のレポート(100%)
教科書/Textbooks
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1 指定書籍なし。プリント配付
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 河添房江 性と文化の源氏物語―書く女の誕生 筑摩書房 1998 9784480823403
2 秋山光和 王朝絵画の誕生―『源氏物語絵巻』をめぐって (中公新書 173) 中央公論社 1968 9784121001733
3 清水好子 源氏物語の文体と方法 東京大学出版会 1980 9784130800457
4 久下裕利 源氏物語絵巻を読む―物語絵の視界 笠間書院 1996 9784305701640
5 三谷邦明・三田村雅子 源氏物語絵巻の謎を読み解く (角川選書) 角川書店 1998 9784047033023
6 池田忍 日本絵画の女性像―ジェンダー美術史の視点から (ちくまプリマーブックス) 筑摩書房 1998 9784480042200
7 佐野みどり じっくり見たい『源氏物語絵巻』 (アートセレクション) 小学館 2000 9784096070031
8 久下裕利編 源氏物語絵巻とその周辺 新典社 2001 9784787927101 7,344
9 河添房江 源氏物語時空論 東京大学出版会 2005 9784130860345 7,344
10 三田村雅子・河添房江編 描かれた源氏物語 翰林書房 2006 9784877372385 2,592
11 三田村雅子 草木のなびき、心の揺らぎ―源氏物語絵巻を読み直す フェリス女学院大学 2006 9784901713092 756
12 高橋亨編 平安文学と隣接諸学 第10巻 王朝文学と物語絵 竹林舎 2010 9784902084900
13 清水婦久子 国宝「源氏物語絵巻」を読む 和泉書院 2011 9784757605930
14 芸能史研究会 日本芸能史 第三巻 古代―中世 法政大学出版局 1982
15 押田良久 雅楽鑑賞 第3版 文憲堂 1981
16 押田良久 雅楽への招待 共同通信社 1984 9784764101593
17 中川正美 源氏物語と音楽 (IZUMI BOOKS) 和泉書院 2007 9784757604148
18 福島和夫 日本音楽史叢 和泉書院 2007 9784757604322
19 国立劇場編 日本の伝統芸能講座 音楽 淡交社 2008 9784473034892 4,104
20 磯水絵 『源氏物語』時代の音楽研究―中世の楽書から 笠間書院 2008 9784305703941
21 神野藤昭夫・多忠輝 越境する雅楽文化 書肆フローラ 2009 9784901314152
22 植田恭代 源氏物語の宮廷文化―後宮・雅楽・物語世界 笠間書院 2009 9784305704597
23 堀淳一編 平安文学と隣接諸学 第8巻 王朝文学と音楽 竹林舎 2009 9784902084887
24 小野功龍 仏教と雅楽 法蔵館 2013 9784831856937 3,780
25 豊永聡美 天皇の音楽史 古代・中世の帝王学 (歴史文化ライブラリー) 吉川弘文館 2017 9784642058421 1,836
26 表章・加藤周一校注 日本思想大系24 世阿彌 禪竹 岩波書店 1974
27 竹本幹夫校注訳 風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア文庫) 角川学芸出版 2009 9784044055011 994
28 横道萬里雄ほか編 岩波講座 能・狂言〈4〉 岩波書店 1987 9784000102940
29 松岡心平 宴の身体―バサラから世阿弥へ (岩波現代文庫) 岩波書店 2004 9784006001292 1,080
30 石井倫子 能・狂言の基礎知識 (角川選書) 角川学芸出版 2009 9784047034402
メッセージ/Message
 この授業は、文学部日本文学科の講義科目で2~4年次生の方々のために開講される科目です。伝統的な美術や芸能について、特定分野を本格的に学びたいわけではないけれども、文学と関係が深そうだからおおよそを知りたい(しかし、あまり時間と労力とを割けない)という方々を念頭に、授業計画を立てました。授業者は、日本絵画・雅楽・能、いずれも実践者ではありませんので、実践を期待する方には物足りないかもしれません。文献解読が中心の授業です。作品鑑賞主体の授業ではありません。パフォーミングアーツとしての日本の伝統芸能を専門的かつ実践的に学びたい方は、総合文化政策学部の「日本芸能論/文化変容論」がおすすめです。と、こう断ったうえで申しますが、文献解読を中心にしても、とてもおもしろい世界が広がると思います。授業者の専門は『源氏物語』です。『源氏物語』を足場に、絵画や音楽・芸能へ進んでいきますので、そうしたアプローチを好ましく思われる方は、ぜひご受講ください。
その他/Others
出欠の確認は、毎回行う予定です。
キーワード/Keywords
絵画         源氏物語絵巻     音楽     雅楽         謡曲     説話     源氏物語