講義内容詳細:公共政策と法/行政と法

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年度/Academic Year 2018
授業科目名/Course Title (Japanese) 公共政策と法/行政と法
英文科目名/Course Title (English) Public Policy and Law/Administration and Law
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 大沢 光
英文氏名/Instructor (English) OSAWA, Hikaru

講義概要/Course description
 現代行政は、警察、環境、教育その他、様々な分野で活動しています。飲酒運転の取り締まりや食品・医薬品の安全性の確保のための規制、たばこのポイ捨て規制、公共料金規制、入国管理など、行政は、憲法や法令が私たちに保障している人権・権利に制約をかけつつ、私たちが個人の尊厳を保障され自由で自らの幸福を追求しうる社会生活を送ることができるよう、活動しています。また、そのような社会生活を私たちに保障するために、行政は、道路を作ったり補修したり、学校を作って教育を受けさせたり、保育所を作って働く人々の子どもの面倒を見たり、生活に困窮する人には必要な金銭を給付したりといった活動も行っています。
 このような活動を、行政がまったく行わなかったり、あるいは、必要以上の規制をかけたり、個人的な好き嫌いによって生活保護の給付をしたりするなどの誤ったやり方で行ったりしたら、私たちの社会生活は非常に制約され、困ったことになります。市町村がごみの収集に来なければ、非衛生的な環境の中で生活しなければならず、それによって伝染病が蔓延することになれば、私たちの生命身体の安全に重大な影響が及ぼされることになる、というのはその例です。
 そこで、私たちの社会生活のために、ひらたくいって私たちの人権保障のために、行政にいかにして適切な活動をさせるかが重要な法学的な課題となります。行政法学は、そのような問題関心から、行政活動の法的コントロールのあり方を考える学問といってよいでしょう。
 この講義では、公共政策の実現のあり方について、行政法学の視点から、行政活動に対する法的コントロールがどのような考え方に基づいてどのようにして加えられているのかを、具体的な事例を素材にしながらみていくことを基本としています。
 毎回の講義の素材には裁判例を用いることが多いですが、この講義が2013年度から開始されたカリキュラム上は「公共政策と法」と位置づけられることに鑑み、政策決定のプロセスの法的統制の方法や政策実現の組織のあり方、政策実現の手段としての規範制定など、公共政策と法とのかかわりという側面についても目配りしつつ、事例とそれをめぐる制度等を解説し、問題提起をしていきます。現代社会に生起している行政法現象を考察し、現代行政のあり方を考える視点を養っていただきたいと思います。

 以下の「授業計画」は一部テーマを差し替えることもあります。確定した計画表は、第1回の講義にてお知らせします。第1回のガイダンスには、必ず参加してください。
達成目標/Course objectives
 この講義は、「行政・公共政策と法のかかわりを知り、行政活動のプロセスにおける法の役割とは何かを考え、それを踏まえて法制度のあり方を考える」ことをテーマにしています。そこで、講義の達成目標は、(1)行政活動に対する法的コントロールがどのような考え方に基づいてどのようにして加えられているのかを理解すること、(2)様々な政策を実現するための制度それ自体や制度の運用の在り方を法的観点から考えられるようになること、(3)現代社会に生起している行政法現象を知り、法がどのような役割を果たしているのか、果たすべきかを考えられるようになること、の3点とします。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
2018年度入学生のうち「公共政策」コースを志望する者は、必ずこの講義を受講してください。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class はじめにーガイダンス
事前学習/Preparation なし。
事後学習/Reviewing なし。
2
授業計画/Class 「法律の根拠」ってなに?—浦安漁港ヨット係留用鉄杭強制撤去事件—最二判平成3年3月8日民集45巻3号164頁
事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、そこに出てきた用語等を法律用語辞典や教科書等で確認し、整理をする。
3
授業計画/Class 信義誠実な行政って?—在ブラジル被爆者訴訟—最三判平成19年2月6日民集61巻1号122頁
事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、そこに出てきた用語等を法律用語辞典や教科書等で確認するとともに、判決文の読み方等を復習する。
4
授業計画/Class 「消費者庁」はなぜ設置された?—縦割り行政とはなにか
事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、そこに出てきた用語等を法律用語辞典や教科書等で確認し、参考文献を調べて読んでみる。
5
授業計画/Class 「健康で文化的な最低限度の生活」水準は誰が決めるの?—生活保護老齢加算廃止訴訟—東京地判平成20年6月26日判例時報2014号48頁
事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、そこに出てきた用語等を法律用語辞典や教科書等で確認するとともに、判決文の読み方等を復習する。
6
授業計画/Class 子どもの貧困をどうするか(ゲスト講師予定)
事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、取り上げられた事柄について、さらに調査を深める。
7
授業計画/Class ダム建設でアイヌの遺跡が沈んでしまっても仕方ない?(前編)—二風谷ダム訴訟—札幌地判平成9年3月27日判例時報1598号33頁
事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、そこに出てきた用語等を法律用語辞典や教科書等で確認するとともに、判決文の読み方等を復習する。
8
授業計画/Class 同上(後編)
事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、そこに出てきた用語等を法律用語辞典や教科書等で確認するとともに、判決文の読み方等を復習する。
9
授業計画/Class 情報公開は何のためにあるの?-情報公開と公文書管理をめぐって

事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、取り上げられた事柄について、さらに調査を深める。また、法律用語辞典や教科書等で、用語を確認する。
10
授業計画/Class 空き家対策と法

事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、取り上げられた事柄について、さらに調査を深める。
11
授業計画/Class 食品汚染による健康被害の拡大を防がなかった行政の責任は?—カネミ油症第3陣訴訟—福岡地裁小倉支部判昭和60年2月13日判例時報1144号18頁

事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、そこに出てきた用語等を法律用語辞典や教科書等で確認するとともに、この事件への現在の対応を調査する。
12
授業計画/Class “公益”(?)のためなら我慢せよ?—第1次厚木基地騒音公害訴訟—最一判平成5年2月25日民集47巻2号643頁
事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、そこに出てきた用語等を法律用語辞典や教科書等で確認するとともに、判決文の読み方等を復習する。
13
授業計画/Class 日本の司法のあり方を考えてみよう!―『日独裁判官物語』(1999年)を観て—
事前学習/Preparation 第2回の復習をする。
事後学習/Reviewing 感想を書く。
14
授業計画/Class 原子力政策と法(前編)-原発の立地・再稼働と地方自治
事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、取り上げられた事柄について、さらに調査を深める。地方自治制度について、教科書等を参照し、理解を深める。
15
授業計画/Class 同上(後編)―被災者の”帰還”をめぐって、おわりに
事前学習/Preparation レジュメを読んでくる。
これまでの復習をする。
事後学習/Reviewing 講義の内容を復習し、取り上げられた事柄について、さらに調査を深める。
授業方法/Method of instruction
 毎回、具体的な事例を素材に、行政と法のかかわりについてみていきます。 個々の回では、当該事例において問題となっている制度の仕組みを十分に説明した上、具体的な事案から行政活動に対する法的コントロールのあり方について問題を考えていくことを基本とします。
 なお、ゲスト講師(外部の方を予定)を予定しています。日程等については、改めてガイダンスでお話しします。
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 75%  学期末試験の割合は75%以上で評価し、受講票の提出回数あるいは提出課題を評価に含めます(ボーナス点を含む)。詳細は、ガイダンスにおいて述べます。なお、学期末試験の持ち込みは不可とします。
2 平常点 In-class Points 25% 毎回の講義で提出する受講票の記述内容を評価の対象とします。
教科書/Textbooks
 コメント
Comments
1 とくにありません。学生ポータルを使って適宜レジュメ・資料等を配布しますので、事前にざっと眼を通しておいていただければと思います。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
コメント
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1 藤田宙靖 行政法入門[第7版] 有斐閣 2016 簡単に読めそうなもののみ挙げておきます。
メッセージ/Message
 この講義では、時事的な問題にも適宜触れたいと考えています。みなさんは、日常的に新聞等を読むなど、アンテナを張っておいてください。
 学生ポータルで配布されたレジュメや資料は事前に読んで来られると当日の講義の理解が深まると思いますので、ざっとで結構ですからレジュメ・資料に目を通して来てください。
その他/Others
六法(ポケット版の六法でよい)を持参してください。みなさんの六法に掲載されていない条文は、こちらで配布します。
キーワード/Keywords
行政法         公共政策     政策決定     法律による行政の原理     行政裁量     公契約     公共事業     原発設置許可     地方自治