講義内容詳細:日本文学特講Ⅱ[10]

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 日本文学特講Ⅱ[10]
英文科目名/Course Title (English) Lecture on Japanese Literature Ⅱ [10]
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 日置 俊次
英文氏名/Instructor (English) HIOKI Shunji

講義概要/Course description
 授業は対面を予定しています。
 ただしオンラインで可能なやりとりの活用も排除せず、授業進行のためにコースパワーを使用しますので、注意してください。
 この要項を執筆している現在、東京都に毎日10,000人以上のコロナ新規感染者が出ています。
 さまざまな変化にも柔軟に対応していきたいと思います。新学期開始時にはコースパワーによって連絡を行います。基本は対面授業ですが、オンラインの自己学習型を導入する予定です。リアルタイムでオンラインの授業をすることはありません。
 対面授業のほかに、コースパワーで教材や課題を示しますので、よく自分で考えて、毎回小レポートをコースパワーで教員に送る形になります。ときに自分で問題を研究する形になりますが、大変厳しい難解な授業ですので、毎回努力して自分の考えをしっかりまとめなければなりません。
 授業は、特別な事情のある場合は考慮しますが、基本的に日本文学科の学生だけを対象として行いますので、ご注意ください。非常に門の狭い、少人数の限定された授業です。
 これは日文近代専攻の卒論執筆講座です。なお、授業登録の前に、以下のシラバスを読むことは、すべての大前提です。シラバスを読まずに授業を受講することは禁止します。自分できちんと確認するなど、みずからやるべき作業をせずに自分の権利だけを主張する学生は、周りのまじめな参加者たちに迷惑をかけます。この授業には参加しないでください。オリエンテーションにも参加せず、授業がかなり進んだ頃に、初めて教室に現れて、問題にされず、怒り始めて「登録できないのなら最初からシラバスにそう書いておけよ」と叫ぶ学生がいます。シラバスにははっきりと書いてあります。「選ばれた日本文学科学生のための授業です」「とにかく、くれぐれも近寄らないでください。」「出席しない学生は相手にしません。」
 さて話を本題に戻しましょう。この授業は、繰り返し確認しますが、日本文学科学生のために設けられた、特別講義です。システム上は、コンピューターの都合で登録がフリーになっていますが、登録と受講許可は別問題です。それは特別な場合に融通が利くようにしてあるだけなのです。コンピューターにはコンピューターの都合がありますが、それは文学の本質とは無関係です。この授業では、教員の指示に従うことが、重要なポイントとなっています。
 この授業は「日本文学科学生」に対し、日置流「近代文学で卒論を執筆する訓練道場ステップ2」ということになります。「日本文学科で近代文学を専攻するエリート学生が卒論を書くための特別な卒論準備コース」です。優れた研究者を養成するための専門コースであり、それ以外の目的は定めていません。型破りの授業を行うので、「型破り道場」とも呼ばれます。
 教員の独創的で高度な文学理論と作品解釈について、その内容を理解することが、この授業の目標です。そのうえで学生に、それぞれ自分の意見を述べてもらいます。責任ある「自分の考え」を確立してもらいます。授業形式への批判や、内容に関しての批判は許されません(授業形式や方法論に関しては40年以上かけて、磨きに磨き上げられて、もう議論は終わっており、空疎な批判は時間と労力の無駄になります。たとえて言えば、予約を取るのが至難である5つ星の「レストランHIOKI」の味はもうこれだと決まっているのです。もちろん修業は日々続けていますが、40年も店を開いていて味が定まらないレストランでは話になりません。それぞれの学説の提起に関してはどこまでも自由です。教員は、自分の学説を学生に押し付けることはしません。毎年、授業内の議論は新しくなります。教員に同調する必要は全くありません。しかし教員の考えの内容を「理解する」ことは必須です。論理と感性と経験と時間によって磨き上げられた意見をヒントにして、反対するにせよ賛成するにせよ、学生には、それぞれの自説を展開してもらいます。そこに、卒論を書く芽が育ち始めるのです。そのために、大学院レベル、さらにいえばそれ以上の能力と努力が必要とされます。少なくともそれに見合う気力と覚悟が要求されます。 授業で扱う作品は、おもに横光利一の初期短編で、現代においてほとんどかえりみられていない作品群です。このように、あまり有名ではない作品の細部を徹底的に考察するという、重箱の隅をつつくような、味気のない、極めて地味で愚直な授業を行うので、日本文学科学生であり、しかもそのなかでも最も優秀でやる気のある学生でなければ、最後までついていくことが不可能です。
 具体的には、1、2年生のときに日置卒論入門講座のステップ1の授業を受けた学生のために設けられている授業です。ステップ1とステップ2のスパルタ教育を組み合わせて、日本文学科学生の卒論特別エリート道場における「入門準備」は完成します。したがって、繰り返しますが、教室においては、日本文学科以外の学生は想定されておらず、また日本文学科学生のうちでもステップ1に参加していないものは、参加者として想定されていません。
 とにかく受講はやめておいたほうがいいです。後から、難しすぎるとか、出欠が厳しすぎるとか、文句を言っても、後の祭りです。また、教員は作家であるため、自身の著作を参考文献に用いることがあり、購入して読まなければなりません。受講することは避けたほうが賢明です。
達成目標/Course objectives
「横光利一研究 ――短編小説の世界――」
 繰り返しになりますが、この授業を受講することはおすすめしません。
 以下の記述は、日文科の中の一握りのエリート学生以外は、読む必要がありません。
 これは日本文学科学生の中でも、ほんの数名の、最も優秀なエリート学生のためだけに設けられた、実質的に演習形式で「横光利一専門研究者養成特訓コース」と呼ぶべき授業です。日本文学科学生で、横光利一で卒論を書く学生を受け付けています。
 将来学会を背負って立つ気鋭の横光利一の専門エリート研究者を育てるつもりで、手加減しない授業を行います。日本文学科の学生で、本気で文学と取り組む一握りのエリート学生のみが、授業についていくことができます。「自分はエリートです」と言い切る覚悟のある学生のための授業ですが、そんな学生は、もし3名もいるならば、よいほうでしょう。あくまでも参考のために付け加えると、昨年の実績ですが、単位の出た学生は数名にすぎません。
 もう少し具体的に言えば、1年生のときに、卒論入門講座「短編小説の世界」のスパルタ授業(ステップ1)で鍛えられた学生のために設けられた、ステップ2の授業です。つまり1年生のときの授業の延長であり、その進化形です。
 1年次の「短編小説の世界」(ステップ1)ではさまざまな作家の作品を扱いましたが、この授業は横光利一という1人の作家の作品群を集中して解読します。つらい授業です。何度も机の上に学生の涙がこぼれます。しかし教員は鬼です。容赦しません。この教室では涙など通用しないのです。泣いている暇があったら、1ページでも卒論を書き進める方がよいでしょう。時間が惜しいのです。
 教科書は、岩波文庫版『日輪・春は馬車に乗って他八篇』を用います。これは自力で手に入れなければなりません(古本でもコピーでも図書館で借りた本でも可)。購買会ではまとめて売りません。手に入れられない時点で、授業を受講することが出来ません。これが最初の試練です。授業初日にもってきてください。
 授業では、厳しく出席をとります。 毎回出席する学生のための授業です。1度でも無断で欠席すると成績が下がるか、あるいは単位が出ません。そのために卒業の危うくなる学生もいますが、苦情は受け付けません。泣いても無駄です。誰もが、授業のあまりの厳しさに、どうせ毎回泣くことになるからです。
 参加者は毎回意見を求められ、毎回試験があり、また何度もレポートを提出し、山のような文献を読むことを求められます。授業では、河原の砂粒を一つ一つ拾うような、気の遠くなるほどの細かい議論をおこないます。まったく面白みはありません。この授業で、かつて一度でも笑いが漏れたりする場面はありえませんでした。もちろん眠ることもゆるされません。授業中に眠れば、チェックをして欠席扱いとなります。もちろん初回授業に欠席した学生は、登録を受け付けません。この文章を読まずに登録しようとする学生があとから文句を言ってくることが多いのですが、受け付けません。時間の無駄だからです。
 スパルタ式の授業で、教員は鬼であり、融通が利きません。もしそのような授業に自分から飛び込む学生は、それだけの自信があるはずです。
 ふだんから教員と交流があり、教員の融通のきかない生真面目(きまじめ)な性格をよく知っている学生の受講を許可します。また、選択したのちに、厳しすぎるという理由で、途中で授業の受講を放棄することも許しません。教務課に、言いつけに行っても相手にされません。あらかじめ注意してあります。危険だとわかっているのに、なぜ、燃え盛る火の中に自分から飛び込むのかと質問されるでしょう。「シラバスを読まなかったのか」と質問されるでしょう。「読まなかった」と答えたら、それで、すべて終わりです。
 これは必須科目ではなく、選択科目です。知らないふりをして卒業すればいいのです。自分から望んでわざわざ悲惨な思いをすることはありません。
 それでも、ステップ1を乗り越えたので、どうしてもというのであれば、自分の自由意思で、自己責任のもとに、覚悟して参加してください。その際は、さらなるステップアップのためには努力を惜しまないという才能と覚悟が不可欠です。 
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 最初の授業に出席すること。
 基本的に、1年生のときに「短編小説の世界」(ステップ1)を履修した者が、2年生になって受講するための授業(ステップ2)です。
 授業は、徹底的に準備され、すべて有機的に連関が考えられてあるので、難解な「HIOKIワールド」が肌に合うと考える、ごくごく少数の優秀な学生には、それなりの収穫があることを約束します。
 4年生の卒論へつづく、卒論準備入門の完成コースと考えてください。
 
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 第1回はコースパワーによる授業です。
「火」について その概要
授業ガイダンスは行わない。
また以下に記述する授業計画はあくまでも例であり、変更が加えられることがある。受講者の様子を見ながら話を進める。
またこの授業は通年で受講することが受講の条件である。

2
授業計画/Class 「火」 少年の落書きについて
 少年の落書きは何を意味しているのか?
3
授業計画/Class 「火」における母の意味 
 母とは何か?
4
授業計画/Class 「火」にみられるエロスの問題

5
授業計画/Class 「火」 まとめ
6
授業計画/Class 「御身」 概要 
7
授業計画/Class 「御身」  姉について
8
授業計画/Class 「御身」  出産について
9
授業計画/Class 「御身」  まとめ
10
授業計画/Class 「春は馬車に乗って」  概要
11
授業計画/Class 「赤い着物」  概要
12
授業計画/Class 「赤い着物」  花と雨について
13
授業計画/Class 「赤い着物」  死について
14
授業計画/Class 「赤い着物」 まとめ
15
授業計画/Class 前期授業のまとめ
「火」「御身」「赤い着物」から見えてくる人間横光利一
 
事前学習/Preparation コースパワーに、数日前から教材が配布されるのでそれを読んでおくこと。
事後学習/Reviewing コースパワーでレポートを提出する。学生たちのレポートが次回授業で公開されるので、それを読んで考察を深めること。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method ハイブリッド型ブレンド形式 / hybrid blend
補足事項/Supplementary notes 授業は、まず教員が作品の独自の解釈・説明を展開することになります。つまり学生に問いかけを行うわけですが、それに対する学生の側からの意見発表を期待しています。すなわち教員と学生との応酬によって授業は成立します。
 内容はものすごく高度で、大学院生でも難しいと考えられるレベルです。毎回、意見発表が必須です。もし学生がしっかり答えられない場合は、教員の機嫌がものすごく悪くなり、その場が険悪なやりきれないムードとなり、氷りついたような教室でじっと冷たい視線を浴びることとなり、普通の人間にはとても精神的に耐えられる授業ではありません。
 誇張ではなく、まさに、氷河期のおそろしい氷の山の中に裸にされて独りで放り出されるのと同じ感覚、恐ろしさと孤独とを味わうことでしょう。
 なお、授業で扱う作家は横光利一ですが、扱う作品の順番、テーマなどは、その都度、授業の流れや学生の反応を見ながら、柔軟に変更することがあります。シラバスの授業予定はあまり厳密な順番で記入されていません。
 また授業の一番重要なポイントは、シラバスに書かれていません。その点もしっかり了解しておく必要があります。日置の授業は秒単位で計画が張り巡らされていますが、学生の反応次第で、日置はどんどん計画を変えていきます。
 常識は通じません。覚悟したほうがいいでしょう。 

活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 100% 【前期科目成績評価】【通年科目成績評価】
 前期、後期の終わりにレポートを提出します。授業への取り組みの積極性、意見発表の回数なども考慮に加えて評価します。成績評価はきわめて厳しいものです。教員を超えた学生にしか、よい成績はつきません。また、やる気の無い学生には初めから単位が出ません。 またその場合、単位に関する苦情は一切受け付けません。
 数人の学生しかおらず、毎時間出欠をとり、短時間でリアクションペーパーに意見を書いてもらい(毎回卒論を書いている感じです)、しかも意見を発表してもらいますので、出席していない学生は一目瞭然です。
 評価基準は、レポート50%、授業時の発表内容50%です。
教科書/Textbooks
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1 横光利一 『日輪・春は馬車に乗って 他八篇』(岩波文庫 緑75-1)  収録作品は「日輪」「春は馬車に乗って」 「火」「笑われた子」「蝿」「御身」「花園の思想」「赤い着物」「ナポレオンと田虫」「機械」。  一年間この本を持ち歩くことで、作者と徐々に仲良しとなっていく感覚を味わってもらいます。これは非常に重要なポイントです。 そのほかの教材は、手作りのプリントをコースパワーで配布します。また教員の小説を教材に用いることがあります。
参考書/Reference books
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1 横光利一 『機械・春は馬車に乗って』(新潮文庫、日置俊次注)。  本文も読みやすく、日置俊次による詳細な注を参考にすることが出来ます。 しかし、この本を教科書には採用しません。 
メッセージ/Message
 くどいほど繰り返しますが、この授業は自由選択の科目です。教員には、学生にサービスをするとか、息抜きを与えるという発想は存在しません。学生のご機嫌を取ったり、学生をほめる授業などという発想もなく、ひたすら地道に苦行を重ねる授業です。自分の責任において好き好んで選択したあとで、単位が出ないと苦情を言う学生がいますが、そういう苦行の授業です。
 この授業は教員の非常に偏った発想に基づく授業であり、教員の暗い性格と陰険さと鬼のような恐ろしさをよく了解して、がまんができる学生のみ受講できます。これは、少数精鋭の、研究者の卵のためのエリート養成コースです。ただし、努力を惜しまない学生には、日置はまごころのこもった授業をすることを約束します。
 なお、この授業は何らかの形で、人数制限が行われることがあります。できるだけ少人数で、やる気のある優秀な学生のみ、とことん厳しく、大切に育てていこうとする授業です。なお、前期の授業を履修せず、後期から履修することは原則としてできません。   
その他/Others
 横光利一 『日輪・春は馬車に乗って 他八篇』(岩波文庫 緑75-1) を最後まですべて読むこと。
 それぞれの作品について、自分の頭で考えぬくこと。
 成績は、通常点(授業時の発表、議論への参加の積極性など)50パーセント、期末レポート50パーセントでつけます。議論に参加することが重要です。なお1回を越えて休むと単位がでません。 

キーワード/Keywords
横光利一         短編小説     日置俊次     スパルタ教育     少数精鋭     毎回意見発表     君子危うきに近寄らず